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中村俊輔という知性 王から見えるチームの変化

シーズン開幕前、横浜F・マリノスについて選手の平均年齢の高さを懸念する声が多くあった。だが、その懸念をものともせずに、チームは躍進を続けている。中村俊輔が語るチームの変化とは?

text by 二宮寿朗 photo by Raita Yamamoto

【フットボールサミット第14回】掲載

じいさん同士だと合わせやすい

――今年のマリノスの大きな特徴として言えるのがスタメンの平均年齢の高さ。30歳を超えた「おじさん集団」でもあります。中村選手は35歳ですが、マルキーニョス選手は37歳、ドゥトラ選手は40歳と上には上がいますよね。

「じいさんとじいさんがくっつくと面白いんだよね(笑)。技術と判断の速さがあって、感覚が似てたりするから、相手がパワーとかスピードでガッと来られても回避できる」

――マルキーニョス選手とのフィーリングは実によく合っているなと感じます。8月のベルマーレ戦でも、よくそのコースに見えてたなってところにパスを送って、マルキーニョス選手がPKを獲得したわけですが。

中村俊輔という知性 王から見えるチームの変化
中村俊輔が語るチームの変化とは?【写真:Raita Yamamoto】

「マルキは本当によく走る。試合の映像を後で見ても、あっ、マルキここで走っていたのかって思うことがよくある。だからあのときは、マルキだったら走ってくるだろうと思って。マルキが一瞬下がって前を向いたので、瞬間的に出した。そうしたらほぼ同時に走り始めたからやっぱそうなんだと思ったね。こういうような形を練習中からコミュニケーションを取って、いっぱいつくっていくことが大事になってくる。

 それにドゥトラもさすがだね。(サイドで詰まって)困ったら、蹴るフリをして斜めにドリブルして中に入ってきたりする。普通、ライン際にポッと蹴ってスローインを取ったり、苦し紛れに反転してGKに返したりするもんだけど、そういうのを感覚として持ってる。サッカーをよく知っている選手がいるから、お互いの感覚を合わせやすいよね」

――大人のサッカーをやれている、ということなんでしょうか。

「俺がトップ下から引いたりしてちょこちょこやってゆっくり前に進んで、そこでボールを取られてもガッと守備で奪いにいく。ロングボールを蹴られても(栗原)勇蔵とボンバー(中澤佑二)がはね返してくれるし、そこでまたボールを持てばいい。要は、自分たちのキャラクターを分かったうえで、今の選手たちでやれるサッカーを、みんなが理解してやっているということだと思う。

 たとえば簡単にボールを前に蹴ったとしても、今は守りの時間だから、別に相手ボールになってもいいや、みたいな割り切りが今の俺らにはある。2トップだったら、何だよ、今のタイミングなら速攻になったかもしれないのにってなるかもしれないけど、俺らは1トップだし、仕方ないよって。だけど前からは追う。何を取って、何を捨てるか。まだまだだけど、こうなったらこうやるという引き出しができてきた。細かいところも浸透しはじめてきたかな」

――そういった意思疎通はどうやって図ってきたのでしょう?

「トップ下でボールも多く触れるから自分の感覚を伝えやすい。今の場合は、こうしようか、ああしようかって練習からコミュニケーションを図れている感じはある」

――中村選手は攻撃ばかりでなく、守備も相当にこなしています。前線で追いかけてプレッシャーをかける一方で、最終ラインの近くまで下がってきて守備もする。

「昔、4-4-2のときに、相手(のサイドバック)がこっちのサイドバックの裏に蹴ってきて、それを斜めにストッパーが行かされるのが凄く気になっていた。今、FWみたいな今のポジションになったから、自分が高い位置から行けばいいかなと。(ロングボールを)無理して出されても、勇蔵とボンバーがヘディングできるから、そこでもう1回自分たちのボールにすればいいだけのこと。

 守備は前から追うのが基本だから、相手のボランチにボールが渡ったら追いかけていくし、ストッパーに行ったら2度追いしていく。でもそういうランニングって疲れないんだよね。真ん中のポジションだから試合中、どこからボールが来るか分からないし、だからゲームにも集中して入れている。ゲームに入れているから疲れを感じない。試合後にどっと疲れが来るんだけど(笑)」


続きは『フットボールサミット第14回 横浜F・マリノス 王者への航路』にて、お楽しみ下さい。

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フットボールサミット第14回 横浜F・マリノス 王者への航路
■[INTERVIEW] 中村俊輔という知性 二宮寿朗
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