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Jリーグ 11年前

【緊急対談】2ステージ制から考える。今論ずべきJリーグの問題点とは?(その4)

text by 澤山大輔 photo by Asuka Kudo / Football Channel

宇都宮 「日本代表はBチームを作るべき」っていうのは、後藤健生さんもおっしゃっていましたけど、そういうメリットがあるんだったらJは協力すべきだよね。
参照

澤山 めちゃくちゃ動員伸びていますからね、セレッソ。もちろん全チームがこの恩恵を受けられるわけじゃなくて、活躍した選手がいるチーム限定という点はありますけど、メリットが大きいわけで。

サッカー部員がJリーグを見られないのはなぜ?

澤山 もうひとつ、これもJFAと連携しないと無理なんですけど夏休みの導入です。アンダー18より下のカテゴリー全体に、7月・8月に試合を開催することを禁止する。で、部活動単位に格安の団体チケットを発給して、2~3試合を部活動単位で観戦してもらいます。交通費等の問題については、個別に解消する必要がありますが、そこはJリーグが予算を組んでいいはず。

2ステージ制から考える
子供たちがプロリーグを生で観戦することは重要【写真:工藤明日香 / フットボールチャンネル】

 夏に試合やってもこれだけ暑い中ですから、パフォーマンスなんてグダグダに下がる。熱中症の危険も大きい。それよりもちゃんと休みを取らせて、サッカーだけでなくいろいろなことを経験させたほうが人間的にも伸びる。知人のある指導者も「夏に伸びるなんて幻想だ」「ちゃんと休ませたほうがいい」ということを言っていました。子供のためにも間違いなく良い施策になると思いますが、僕がこれをやるべきと思うのは「子供にJリーグの観戦習慣をつけてもらう」ためです。

宇都宮 子供たちには、もちろん練習や試合も必要なんだけど、プロリーグを生で観戦するというのも、すごく重要なことだとは思いますよね。でも、なかなかそうならない事情もまた、あるんでしょうね。

澤山 今の子たちって忙し過ぎなんですよね。土日に試合があって平日は練習。だから、サッカーなんか絶対見に行けない。だけど2カ月夏休みがあって、2~3試合必ず見るとなれば、試合内容が面白かったり観戦環境が良かったりすれば、リピーターになり得るでしょう。

 例えば公益財団法人日本中学校体育連盟の集計によると、中学のサッカー部員の数が、野球部員をついに抜いたそうです(参照)。サッカー部が25万3,090人、軟式野球が24万3,664人。もちろんこの数字は全体のトップです。あくまで皮算用ですが、中学生のサッカー部員全員が1年に1回行けばそれだけで25万人の動員増ですよね。

 無料招待券ではなく格安で団体チケットを買ってもらうわけなので、全員という皮算用はおかしいかもしれませんが。「将来の太い顧客を育成する」という観点でいえば、この層に対して積極的に投資しない意味はないと思うんですよね。

 もちろん中学生以下だと一人で観戦できる子とそうでない子がいるから、そうでない子に関しては親御さんが付いて行かなきゃいけない。だけど、彼らが夏休みだったら1回ぐらいは可能でしょう。

宇都宮 自分自身の経験で考えても、中学高校時代のサッカーって、基本的に「練習と試合だけ」でしたからね。もちろんプロがなかった時代でしたけど、今もあんまり状況は変わってないでしょ。

澤山 「なぜJリーグの観戦者の大半が、非サッカー部員なのか?」ということは、あまり知られていませんよね。少し考えれば、国内トップリーグの試合を、サッカー部員が「練習」や「試合」のために見られないのは大変おかしなことだと思うわけで。実際そういう声を上げている人は育成畑には結構います。

 このあたりの認識を、もっと広めないといけない。日程が合わないからJを見られない、その子たちは若い頃からJリーグを生観戦していないから、国内よりもテレビで見られるプレミアリーグやスペインリーグ、ブンデスリーガを見に行く。プレーヤーとしてはフットサルを続けるとかして、一生サッカーをやるかもしれない。だけど、Jリーグに関しては観戦機会がないまま成長すれば一生縁がなくなるかもしれない。

 そういう人、結構いませんか? サッカー部だったのに、Jリーグには大して関心がない層。自分でやるプレーのほうは熱心だけど、地元のサッカーを見に行く文化が根付いていない。「ヨーロッパのほうがレベルのほうが高い、Jリーグは低いよね」って話になる。実際そうだとしても、本来もっとも太い顧客層であるべきサッカー部員がその状態にある、というのはJリーグのプロモーションの失敗ですよね。

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