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パレスチナ問題、日韓関係から考える。サッカーは“代理戦争”の場としてふさわしいのか?

text by 三浦有喜 photo by Yuki Miura

失敗だったが世界中に伝わったメッセージ

 そのイスラエル兵も約5年もの間、ハマスに拘束されていて、国民的英雄の扱いを受けている兵士であった。その時にサルサクが言った言葉が「彼のスローガンは拳銃だ。それに対して私のスローガンはサッカーである。サッカーのメッセージは愛と平和だ。この理由において、私は招待を断る」というものであった。

 あえなくこの「中東和平」は失敗に終わった。だが、イスラエルに拘束されていたときは、ハンストをすることでしか世の中に訴えることができなかったサルサクが、バルセロナという世界的ビッグクラブからのオファーにより、世の中に対して発言をする機会を得ることができた。実際に彼の元には多くの取材陣が殺到し、そのメッセージは世界中に伝わった。

 かくいう私も、そのような報道がなければこの出来事を知ることはなかったであろう。この時から、私は「サッカーが代理戦争の場としてふさわしいのか否か」と考えるようになった。

「またか」

 東アジアカップの日韓戦で韓国人サポーターが陣取るゴール裏に掲げられたハングル文字の横断幕を見て、そんなことをテレビ越しに思った人は多かったはずだ。最近の日韓戦は、何かと政治の問題が絡んでいる。昨年のロンドン・オリンピック3位決定戦もその一例として挙げられる。

 ハーフタイムに横断幕が撤去された後、多くの韓国人サポーターは応援を”ボイコット”してしまった。韓国のホームだったのにも関わらず、チームに対する応援の声は薄れ、逆に日本人サポーターの大きな声援がテレビからも伝わってきた。

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