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モウリーニョとは圧倒的な差が。マンU低迷を招いた指揮官の人間力

シリーズ:フットボール母国の神髄 text by 森昌利 photo by Kazhito Yamada / Kaz Photography

緊張感ゼロだったチェルシー・サポーター

 一方、モイーズ監督は、「1位になるのがこのチームの義務。最後まであきらめない」と語ったが、顔色は顔面蒼白といっていいほど血の気をなくしていた。

 しかしそれも無理はない。前半17分に先制された後は、終始チェルシー・ペース。しかもその後失点した時間帯が悪い。エトーの2点目は前半終了間際の45分。これで2点差でハーフタイムを迎えるはめになった。

 追いつくためには後半の早い時間帯で1ゴールが欲しかったが、逆に開始早々の4分、三たびエトーにゴールを奪われて万事休す。しかもコーナーキックからの失点。絶対セットプレーでやられてはいけない流れだったのに、そこでだめ押し点を食らった。

 これではチェルシー・サポーターにとっては、負けようがない展開だろう。マンチェスター・U戦だというのに、スタジアムには緊迫感ゼロ。

 お祭りムードの中、サポーター達は上機嫌でモイーズに向かい、「David Moyse, we want you to stay!」(ディビッド・モイーズ、あんたには残って欲しい!)と皮肉なチャントを大合唱していた。そんな屈辱にまみれた試合直後の会見で、顔色がいい方がおかしい。

 奇しくも試合後、元イングランド代表FWで、名古屋グランパスでのプレー経験があるギャリー・リネカーが「もしもモウリーニョがマンチェスター・Uの監督に就任していたらどうなっていただろう?」とツイートしていたが、このマンチェスター・Uの完敗劇を眺めながら、僕も全く同じ思いを抱いていた。

 それはチェルシーのダッグアウトのすぐ真裏にある記者席で両監督の後ろ姿を90分間眺めていれば、自然に浮かぶ疑問だった。

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