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EURO2016 8年前

ポルトガルをけん引する“スポルティングの血統”。三者三様のドリブラーが秘める勝利のメンタリティ

text by 舩木渉 photo by Getty Images

スポルティングの“血統”がポルトガル勝利の鍵に

クリスティアーノ・ロナウドとナニ
ともにスポルティング出身のC・ロナウドとナニ【写真:Getty Images】

 クアレスマも選手としての完成形により近づいている。若い頃はエゴばかりが目立ち、バルセロナやインテルなど必ずしも自分が主役でないチームに入って何度も挫折を味わった。その経験もあり、いまでは自らが持つ類い稀な能力をチームに正しい形で還元できるようになっている。

 超絶技巧を駆使し爆発的な突破力を見せるドリブルはシャープさを増し、急角度に曲がって落ちる制度抜群のアウトサイドキックも健在。そして何と言ってもそれらの武器を自分がゴールを決めるためでなく、チームの誰かがゴールを奪うために使えるようになった。

 故にスーパーサブとして起用されて短い時間しかなくとも結果を残せている。ここまでの4試合すべてで起用されていることからもフェルナンド・サントス監督からクアレスマへの信頼が窺える。

 今大会のEUROでは前評判の高かったポルトガルだが、今のところ本領を発揮できているとは言い難い。それでも準々決勝に進めたのは“勝者のメンタリティ”を持った3人の力があったからこそだ。

 アイスランドとのグループステージ初戦、ナニのゴールがチームを敗戦から救った。3-3の打ち合いとなったハンガリーとの第3戦ではナニが1点、C・ロナウドが2点を挙げ、3度も追いついてドローに持ち込んだ。

 そして今回のナニ、C・ロナウド、クアレスマの流れで生まれた1点。紛れもなく“スポルティングの血統”が結実した瞬間だった。彼らの系譜は今大会ポルトガルの10番を背負い、クロアチア戦はクアレスマとの交代でベンチに下がったジョアン・マリオにも受け継がれている。

 内容が悪くても少ないチャンスを生かして最後は勝ち切る。ビッグクラブで常勝を求められた末に彼らの骨の髄まで染み込んだ勝利へのこだわりは短期決戦のトーナメントを勝ち抜くために非常に重要な要素だ。C・ロナウドを筆頭にナニやクアレスマ、J・マリオらスポルティングの魂を内に秘めた選手たちの活躍がポルトガル優勝への鍵となる。

(文:舩木渉)

【了】

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