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EURO2016 8年前

ウェールズの3得点生んだ“狙い”とは? ベルギーの「個の力」を打ち砕いた「組織力」

text by 海老沢純一 photo by Getty Images

間違いだった選択。自ら“流れ”を手放したベルギー

ウィリアムズ
ゴールを挙げてベンチに駆け寄るA・ウィリアムズ。ウェールズの一体感を象徴する1シーンに【写真:Getty Images】

 早い時間帯でベルギーが先制点を決めたことで、強力な個の力を持つ攻撃陣がさらにその強度を高めていく…。そう考えるのが自然だったが、ベルギーは先制以降、引くことを選択した。

 結果から言って、この選択は完全に間違いだった。ベルギーの前線と中盤はウェールズへのプレッシングを弱めて待ち受ける態勢をとったが、それによってウェールズの中盤は自由にボールを動かせるようになった。

 一方、左CBのフェルマーレンと左SBのフェルトンゲンを欠くベルギーのDFラインは統率がとれず、ウェールズに裏を取られるシーンが増えていく。そして、ロブソン・カヌの突破からウェールズがCKを得ると、アシュリー・ウィリアムズがヘディングで決めて同点。

 1-1となって以降もベルギーは、裏を取られる恐怖心からDFラインを押し上げることができないため、セカンドボールも拾うことができず、完全にウェールズに“流れ”を渡してしまった。

 試合開始から前半15分までのスタッツでは、支配率でベルギーが51.6%、シュート数でも4本:2本で上回っていたが、前半15分からハーフタイムまでのスタッツを見ると、支配率でウェールズが61.9%と圧倒しており、チャンスメイク数も8回:2回、シュート数も8本:2本と完璧に逆転していた。

 ベルギーは、後半からカラスコに代えてフェライニを投入し、トップ下で苦しんでいたデ・ブライネを右サイドに移し、ナインゴランをトップ下に入れることでヴィツェル、フェライニとの中央のトライアングルの強度を高めた。

 この変更は一定の成果を見せ、後半のベルギーはポゼッション65.6%とボールの支配力を取り戻した。しかし、一度手放した“流れ”を取り戻すのは簡単なことではない。

 後半の構図は攻めるベルギーと守ってカウンターを狙うウェールズという、本来の形に戻った。そして、この時点で“流れ”をつかんでいるのはウェールズだった。

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