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セリエA 8年前

「ただ褒めるだけの実況なんて本当のファンは求めていない」 ウーゴ・ルッソの魂【名ラジオ・アナウンサーの矜持】

シリーズ:名ラジオ・アナウンサーの矜持 text by 宮崎隆司 photo by Takashi Miyazaki, Getty Images

スタジアムでラジオ放送を聞きながら試合を見る文化

48年にわたってイタリアでラジオ実況を続けてきたウーゴ・ルッソ
42年にわたってイタリアでラジオ実況を続けてきたウーゴ・ルッソ【写真:宮崎隆司】

 以降、テレビ放送の開始にも携わりながら、94年に国営放送局(Rai)へ入社。そして98年から、イタリアで最も愛されるラジオ番組『ミヌート・ペル・ミヌート(minuto per minuto)』を受け持つようになる。

 この『ミヌート・ペル・ミヌート』とは、ローマをキー局として週末の全スタジアムを繋いで国営放送局(Rai)が放送するリレー方式のサッカー中継である。その歴史は1959年に始まり、第一回目の放送はミランvsユベントス、ボローニャvsナポリ、アレッサンドリアvsパドヴァの3試合だったという。今日のような衛星放送はもとよりテレビ中継そのものがなかった時代、とりわけ70~80年代には実に2500万超とも言われるリスナー数を誇った番組である。

 週末、日曜の午後3時。試合が始まると、ある人々は昼食後の散歩をしながら、またある人たちは近所の公園に集まり一台のラジオを囲みながら、そして実に多くの人々がラジオを持ってスタジアムへ行き、試合を観ながらその実況を聴く。もちろん時代の流れとともにテレビの力に押されているとはいえ、それが今日にしてもなお、この国ではすべての街でおよそ当たり前の光景として広がっている。その番組は、ウーゴの説明によると次のような形である。

「2000年までキー局はミラノだったんだが、現在はローマでね。そこと各スタジアムに派遣されたアナウンサーたちを繋いで順に実況のリレーをやっていくという実にシンプルな構成なんだよ。ユベントス対ミランのようなビッグカードがあれば、その試合に最も長い時間が割り当てられるんだが、それでも1回あたりの中継時間は約90秒で、その他の試合は50~60秒毎にリレー方式で継ながれていくんだ」

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