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高校サッカーの超過密日程に名将が苦言。改革は急務、念頭に置くべき世界基準

text by 元川悦子 photo by Yosuke Koga, Etsuko Motokawa

高校サッカー界の名将が語る改革案

流通経済大学付属柏高校の本田裕一郎監督
流通経済大学付属柏高校の本田裕一郎監督【写真:元川悦子】

 考え直さなければならないのは、こうしたピッチ内の部分だけではない。選手権決勝の後、本田監督が「今回の選手権は超過密日程だった。我々は『プレーヤーズファースト』を最優先に考えるべきなのに、それができていない」と問題提起をした通り、スケジュールの問題は前々から見直すべきだという意見があちこちから出ていた。

 主催の高体連も「1月1日開幕・8日決勝」という以前の日程から「12月30日開幕・成人の日決勝」いう現在の形に変更し、今大会から交代枠を5人にするなど、選手の負担軽減を図ろうという姿勢を見せている。

 夏の高校総体にしても、給水タイムを設けたり、休養日を作るといった配慮がなされるようになった。が、試合時間を短くするのは、ユース年代の抜本的強化にはつながらない。そこは本田監督も強調している部分だ。

「2種の大会は45分ハーフに統一すべきだと私は考えます。そういう規定を日本サッカー協会に設けてほしい。世界のユース年代は45分ハーフで試合をしていることを忘れてはいけない。つねに世界基準を頭に入れるべきです」と指揮官は語気を強める

 選手権にワールドカップ方式を導入することも、本田監督の私案の1つだ。

「全国48チームを4チームずつ12グループに分けて1次リーグを行い、各組1位と2位の上位4チームの合計16チームが勝ちあがって決勝トーナメントをやる形にすれば、ワールドカップと同じになる。高校サッカーから将来の日本代表を送り出したいのであれば、選手権でワールドカップのシミュレーションをしておくことはやはり重要だと思います」

 2010年まで行われていた高円宮杯全日本ユース選手権(U-18)が発展的に解消され、現在の高円宮杯プレミアリーグ(U-18)に移行したことで、ワールドカップ方式の大会は高校サッカー界には存在しなくなった。そういう意味でも、本田監督のアイディアは一考の価値があるだろう。

 40年以上にわたって高校サッカー指導に携わり、2006年ドイツ・2010年南アフリカ両ワールドカップに出場した玉田圭司(名古屋)などの数多くのプロ選手を送り出してきた名将の言葉は重い。我々は改めてその意見に耳を傾けるべきではないか。

(取材・文:元川悦子)

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