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三笘薫のベルギー挑戦を追って(後編)。「全然やれている感覚はない」厳しすぎる自己評価の先にあるものとは?【コラム】

text by 舩木渉 photo by Getty Images

より攻撃的に、より守備的に

三笘薫
【写真:Getty Images】



 以前、彼はJリーグとベルギーリーグの違いについて「スペースの多さと、フィジカル的な能力の差と、技術的なところが全く違うので。比べるのはすごく難しいですけど、僕自身が足りないところで成長するために(ベルギーへ)行っています」と話していた。

 確かにベルギーは個のタフさを伸ばすには最適な環境だろう。若くて勢いがあり、フィジカル的な強みを持ち、打開力に優れた選手が激しい競争を繰り広げるリーグだ。その中で自らが磨いてきたドリブル突破だけでなく、試合全体に好影響をもたらせる攻守両面にわたるタフさを身につけられれば、ブライトン復帰への道が拓けてくるに違いない。

「攻撃の部分でもっと前に行けたら、守備もやらなくていい。正直やりたくない部分は多いですし、やらないくていい部分を増やしていきたい。もちろん(守備が)できるに越したことはないですけど、もっともっと攻撃で前の高い位置をとって、もっと支配したいと思います」

 幸いにもいまのユニオンは主導権を握れる試合が多く、三笘がウィングのようなポジションをとって攻撃的に振る舞える展開にもなりやすい。その中で、相手ボールの時間帯にはしっかりとディフェンスラインまで戻って守備をこなし、ボールを奪ったら一気に前へ出ていくという左ウィングバックらしい動きも板についてきた。

 どちらかといえば守備的なイメージは強くなるウィングバックだが、三笘は「点の取れるウィングバック」としての攻撃でも違いを生み出せる自分を見せなければならないと感じているのだろう。もちろん守備は要求通りにこなしたうえで。自分に何ができるのかを結果とともに示さなければ、価値を理解してもらえないことは身にしみている。

「日本時代はコミュニケーションがやりやすくて、ある程度(自分のことを)わかってくれる選手が多かったので、言わなくてもわかるところだったり、コミュニケーションを取らなくても(自分の)プレーをすれば認めてくれるところが多かったですけど、やはり(ベルギーでは)外国人選手です。

(チームメイトたちにとって)誰かもわからないような選手が来て、まずは1人ひとりに(自分が)どういう選手なのかをわかってもらうのと、コーチングスタッフの信頼を得られるようなプレーをしないといけない。

そこについては練習から常にやってましたし、そういう姿勢を評価してもらいながら、少しずつ出場機会を得られたと思っているので。また(プロとしての)スタートの頃の気持ちに戻って、サバイバルじゃないですけど、自分の中でまたイチからというのを意識してやっていました」

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