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伊東純也は「この順位にいるのは初めて」な苦境をどう乗り越える? 大低迷のゲンクで芽生える“自覚”【コラム】

text by 舩木渉 photo by Getty Images

「こういう苦しい状況の時に何とかしたい」



 この言葉を聞いてから約1ヶ月経っても、まだ状況は大きく変わっていない。苦境でこそ、選手たちの底力が試される。特にチーム内でも在籍年数が長く、年長者でもある伊東のような選手に厳しい状況を打破する起爆剤としての役割が求められる。

「在籍(年数)も結構上の方になってきたし、年齢も上ですけど、声を出すタイプじゃないので、しっかり結果で示したいなと思います。やっぱりこういう苦しい状況の時に(自分が)何とかしたい」

 これまであまりリーダーとしての自覚についてはっきりと言葉にしてこなかった伊東の口から、「何とかしたい」という責任感の込もった言葉が出てきたのは、彼の中で何かが変わってきている証拠だろう。

 昨季はプレーオフも含めたリーグ戦で38試合出場11得点16アシスト。今季はリーグ戦20試合終了時点で3得点7アシストとなっている。個人としては2位になった昨季とさほど変わらない成績を残せているだけに、ゲンクを不調の底なし沼から引き上げられる可能性を十分に秘めている。

 伊東自身「ゴールが入らなきゃ意味ないですけど、もっと確率の高いチャンスが作れるかなという感じはします。(自分がサイドで)クロスを上げるだけじゃなくて、もっと(中に)入っていくとか、そういうところをやっていこうかなと、最近思いました」と語っていたように、個人のプレーからチームに変化をもたらそうと試行錯誤を重ねている。

 ゲンクは現地26日に年内最後のリーグ戦でオーステンデと対戦する。20節終了時点で暫定9位と1ヶ月前から順位にほぼ変化はなく上位との差も詰まっていないが、何としてでも勝利し、後半戦の巻き返しに向けていい流れを作って2022年につなげたいところだ。「実力が出せて、みんながポジティブにプレーできれば負けない」ならば、年内に少しでもチームとして前を向ける状態に少しでも近づけておきたい。

「昨季も苦しい時期はありましたけど、立て直して2位までいった。難しいですけど、まだ折り返しくらいで、(逆転優勝の)チャンスはゼロじゃない。ここから巻き返していかないといけないなと思います」

 ゴールやアシストともに勝利という結果で「この順位にいるのは初めて」という状況からゲンクを上位に導いてチーム全体に自信を取り戻させられれば、それすなわち伊東個人としての大きな成長にもつながる。逆境こそ進歩のチャンスだ。

(取材・文:舩木渉)

【了】

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