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[4-3-3]でどう守る? リバプールでクロップ監督が実現した形、“志向”が見えるバランスとは【フォーメーションのメカニズム・後編】

text by 龍岡歩 photo by Getty Images

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[4-3-3]というシステムはサッカー日本代表、J1王者川崎フロンターレをはじめ多くのチームが導入している。[4-3-3]にはどんな特徴があり、どのようなリスクをはらんでいるのか。1日平均5試合、年間1500試合を観戦する変態による変態フォーメーション本『サッカーフォーメーション図鑑 配置の噛み合わせが生む位置的優位性を理解する』(龍岡歩著、2月15日発売)より、ポゼッション原理主義と称される[4-3-3]というフォーメーションのメカニズムを書籍から一部抜粋して公開する。今回は後編。(文:龍岡歩)


リバプールが実現した高強度の守備

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【図】リバプールの4-3-3

 守備に回った際にはそのまま[4-3-3]の形で守るのか、それとも両WGを一旦中盤まで下げて[4-5-1]([4-1-4-1])の並びで守るのか。そこに監督とチームの志向性が現れる。

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 WGを高い位置に張らせたまま[4-3-3]で守る場合は、高い位置からのプレッシングが必須となるが、チームとしてなるべく早く、それも高い位置でボールを奪い返したい攻撃志向の強さが垣間見える。中盤が3枚しかいないので、ファーストプレスを剥がされたり、ボールを逆サイドに変えられるとピッチの横幅68メートルを3枚でスライドしながら守らねばならず、中盤への負荷は非常に高い。この高強度の守備を極めて高いレベルで実現している代表的なチームがユルゲン・クロップのリバプールである。

 一方、中盤を厚くした[4-5-1]で守る場合は中盤のスペースを5枚で埋めてリスクを軽減している。一旦中盤か自陣まで引いてからボールを奪い、背後のスペースへ再び両WGが飛び出していくカウンター狙いが主体となるだろう。ジョゼ・モウリーニョが指揮したチェルシーやインテルはこのスタイルで黄金期を築いた。

 また、WGに守備をさせない、否、守備をしないというケースの[4-3-3]もある。リオネル・メッシ、ルイス・スアレス、ネイマールを3トップに並べた通称「MSN」のバルサや、カリム・ベンゼマ、ガレス・ベイル、クリスチアーノ・ロナウドを3トップに並べた通称「BBC」のレアル・マドリーがそれにあたる。

 これらのチームに共通しているのは世界最高峰と呼ばれるFWを大金をかけて集め、彼らを同時にピッチに並べる手段として[4-3-3]のフォーメーションを選択している、ということだ。そこには戦術的な狙いよりも、大補強の目玉となったスター選手たちをベンチに座らせておく訳にはいかないというクラブの戦略的な意向も多分に含まれていたはずだ。

 攻撃面においては「一流は一流を知る」ということで、ある程度時間さえあれば3トップの連携は即興でも向上していく。問題は守備だ。メッシやロナウド、ネイマールといった選手たちは本来であればチームで唯一無二となる中心選手であり、ある程度唯我独尊の振る舞いが許される王様である。だが王様は基本的に守備はしないのだ。王様がチームに1人なら周りの選手たちの献身によってバランスを補うことができても、チームに王様が3人もいたらバランスをとるのは難しい。

 実際、MSNのバルサもBBCのレアルも守備の局面では彼ら3人は前線に残って休んでおり、残りの7人で守っていたようなものであった。フィールドプレーヤー全員が当たり前のように攻守でハードワークする現代サッカーにおいて、守備には加わらず前線に残って優雅に佇む彼らの振る舞いを見て筆者は思わず「貴族守備」と名付けてしまったほどである。

 7人で守って、3人で攻める、攻守分業サッカーと言うべきだろうか。だが実際の試合ではそれでも、ひとたびボールを奪えれば前残りの彼らが個の能力によってカウンターから得点を量産できたという一面もある。まさに「肉を切らせて骨を断つ」ようなチームバランスであった。

『サッカーフォーメーション図鑑 配置の噛み合わせが生む位置的優位性を理解する』

<書籍概要>

定価:1870円(本体1700円+税)
1日平均5試合、年間1500試合を観戦する変態による変態フォーメーション本

サッカーフォーメーション界のイロハのイ[4-4-2]から滅多にお目にかかることのない[3-4-3(ダイヤモンド)]までを完全網羅した、フォーメーション変態のフォーメーション変態によるフォーメーション変態のための一冊。4バックと3バックのフォーメーションに分け、フォーメーションごとの強みと弱み、メカニズム、観戦チェックポイントを紹介し、対全布陣噛み合わせ一覧、過去の名チーム、フォーメーション名勝負数え歌なども収録。

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【了】

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