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スペイン代表はどのように立ち直ったのか? 最悪だったチームを蘇らせた男とは【分析コラム】

シリーズ:分析コラム text by 安洋一郎 photo by Getty Images

機能不全だった前半



 まずは最悪だった前半を振り返る。

 攻撃陣において、前節スイス戦との大きな違いはモラタが最前線に入ったことだ。このスペイン代表FWは中盤に降りてくるプレーや相手ディフェンスラインの背後に抜ける動きなど、ボールを引き出す動き出しが巧みな選手であり、この試合でも同様のムーブをみせていた。

 対するポルトガルはツーボランチのルベン・ネベスとウィリアム・カルバーリョがモラタの前で蓋をし、縦パスがモラタに通ったとしてもCBのルベン・ディアスが密着して前を向かせない守備ができていた。右サイドや背後に流れても、もう一枚のCBであるダニーロ・ペレイラが抜群のカバーリングをみせて、前半にモラタが前を向いてプレーできたケースはほとんどみられなかった。

 中央からの攻撃がほとんど封じられた中でスペインはサイド攻撃からチャンスを作りたかったのだが、右WGのフェラン・トーレスと左WGのパブロ・サラビアの2選手はウインガーとして突破力に欠けた。

 特に停滞していたのがフェラン・トーレスの右サイドだ。スペイン代表は今節に限らず、左SBを高い位置にポジションを取らせる「左肩上がり」のサッカーを展開しており、ビルドアップ時に右SBの選手は被カウンター対策をするためにあまり前線に上がらない。そのため右WGのフェラン・トーレスは孤立し、対峙したスピードとフィジカル能力に優れるヌーノ・メンデスに対人戦で完敗を喫した。

 中央とサイドからの攻撃が封じられた結果、放ったシュートは2本と何も可能性が感じられない前半に終ってしまった。

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