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コラム 1か月前

ついにセリエA昇格。“冬の時代”を乗り越えたピサの物語。アメリカ人オーナーと共に歩むクラブ再興と未来への挑戦【コラム】

シリーズ:コラム text by 佐藤徳和 photo by Getty Images

再び訪れた冬の時代。2度目の転機とは?

 アンコネターニは会長職末期の91/92シーズンに、ピサと、そこから30キロの距離にある街のクラブ、リヴォルノを合併させ、「ピゾルノ」という名の新クラブを創設しようと試みた。この奇想天外な構想は、膨大な潜在的ファンを抱え、イタリアサッカーの頂点を争える存在になり得るという考えだった。

 その一環として、コッパ・イタリアのモンツァとの1回戦をリヴォルノのホームで開催させた。当然、サポーターの猛烈な反発に合う。この計画に対してピサのサポーターが、大規模な抗議活動を展開し、計画は頓挫となった。そして、1994年にクラブは破産。アンコネターニの会長退任とともに、再び冬の時代に突入していった。

 エッチェッレンツァ(当時の6部リーグ)での戦いを余儀なくされたクラブは、セリエBにさえ所属できない時代が、20年以上も続く。2007年にはようやくセリエBに返り咲くが、その2年後、財政破綻により、財務監査機構からプロリーグからの除外処分を受け、セミプロのセリエDへの降格となった。それでも、そこから、ゆっくりではあるが、着実にカテゴリーを上げていき、2019年のセリエB復帰を経て、そしてついに今季トップリーグ昇格を勝ち取った。

 2度目の分岐点は2016年のコッラード会長就任だ。若き日には、ユヴェントス下部組織でプレーしたこの人物は、パスタで世界的に有名なバリッラ社や、故シルヴィオ・ベルルスコーニが立ち上げたフィニンヴェスト社でも要職を務めた経験があり、2016年以降、クラブの25%の株式を保有している。

 一方、残りの75%は、投資会社パンプローナ・キャピタル・マネジメントの代表取締役社長(CEO)であるアメリカ人実業家、アレクサンダー・クナスターの所有となっている。2021年にコッラードのかつてのビジネスパートナーであるエンツォ・リッチからこの株式を取得した。この時にクラブの正式名称も今の「ピサ・スポルティング・クラブ」へと変更されている。

 コッラード会長が、イタリアメディア『カルチョ・エ・フィナンツァ』でクナスターとの出会いをこのように述べている。

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