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Jリーグ 6か月前

酒井高徳が他の日本人と違う「思考態度」。思考態度のエラーこそ、日本サッカーのあらゆる問題の根本的原因【BoS理論(8)】

シリーズ:コラム text by 河岸貴 photo by Getty Images

「BoS」的ポジショニングによって酒井高徳が演出したチャンス


【図5-2】相手をしっかり引きつけてからパス

 自陣ペナルティエリアからたった2本のパスで1対1を演出したのは酒井の「BoS」的ポジショニングによると言っても過言ではありません。さらに重要だったプレーは、目の前にスペースがあるのを察知し、ボールを一旦足元に止めるのではなく、ワンタッチで前方に押し出し、テンポをもってドリブルで前進し、ギリギリまで相手を引きつけてパスをしたことです(図5-2)。これによって岡山の最終ラインで佐々木、エリキの2対1がつくられました。

 スピードに乗ったドリブルでDFのプレッシャーを受けて視野を前方に確保し、20メートルくらいの縦パスを強く正確に出せることもモダンサッカーの技術です。もし酒井がプレゼントパスを足元にピタリと止めてその場で思考を巡らしていたら、このようなビッグチャンスは遠のき、「Jリーグ名物」の遅攻になったことでしょう。
 
 この力強いドリブルを見てすぐに縦に鋭く走り出したエリキ、そして同じく前方に走り出したものの、酒井がプレッシャー下にいる状況を認知して、無闇に背後を狙わず足元で受けるプレー(ボールを当てられるよう壁的役割)を選択した佐々木の動きもビッグチャンスをつくりだした要因です。
 
 まとめると、
 
・ボール奪取者(保持者)が相手のプレッシャーあり:足元で受ける(壁的役割の)味方選手の必要性
・ボール奪取者(保持者)が相手のプレッシャーなし:テンポのあるドリブル(ボールを放すタイミングは早すぎず!)、フリースペースを探す、相手を引きつける→数的優位の創出

 さて、この酒井の一連のプレーはいわゆる「認知→判断・決断→実行」の速さが際立ちます。ただ、同じシチュエーションになっても、このような勇気のあるプレーを即座に選択するJリーガーは多くはないと思います。これ以外でも酒井の違いを感じさせるプレーはJリーグで随所に見られます。それでは、他のJリーガーと比べて、何に彼の特殊性があるのでしょうか。

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