「収益の魔術師」「ワンマン・マーケット」異名だらけの奇才
それから、退任する2023年まで、15年間もラツィオで、強化部門の責任者として手腕を発揮した。その間、コッパ・イタリアとスーペルコッパをそれぞれ3度制し、そして、契約最終年の22/23シーズンには、チームをリーグ2位という望外の成績に導いている。ユヴェントス、ミラン、インテルのような潤沢な資金力を持たない中でも、ラツィオで安定した成績を残してきた。
ターレは、知名度の低い選手を獲得し、その才能を開花させる慧眼の持ち主として知られる。セルゲイ・ミリンコヴィッチ=サヴィッチやエルナネス、ルイス・アルベルトといった選手を高値で売り捌き、クラブには多大な収益をもたらした。
ドイツでの失敗を経験し、評価を下げたチーロ・インモービレも見事に再生させ、クラブ歴代最多得点の点取り屋に導いている。こうした手腕によって、この世界では「収益の魔術師」との異名を取るようになった。
さらに魅力的なのは、非凡な語学力を備えている点だ。母国語のアルバニア語に加え、イタリア語、英語、ドイツ語、スペイン語、ギリシャ語の6カ国語を操る。そのため、移籍交渉においても通訳を通さずにコミュニケーションを図ることができ、大きなアドバンテージとなっている。
スカウトを介せず選手を発掘していたため、「ワンマン・マーケット」とも呼ばれていたほどだ。ヨーロッパ各地で見出した若き才能の家族のもとに自ら赴いて交渉を行い、高いコミュニケーション能力で、協力者との強い信頼関係を築く力を備えている。語学力、洞察力、行動力、対話力を兼ね備えたその姿は、まさに理想的なSDの在り方を体現している。