「敬意を求める」選手とスパレッティの確執
FIFAランキング9位のイタリアに対し、ノルウェーは37位。W杯には3度しか出場経験がなく、1998年大会から出場が遠ざかっている。数字だけを見れば、ノルウェーは紛れもなく弱小国だ。
しかし、今のノルウェーは侮ってはならない相手だった。アーセナルの司令塔、マルティン・ウーデゴールや現在世界屈指のストライカー、アーリング・ハーランドを擁し、“小粒感”が否めないイタリアよりも、タレントの数で上回る。もちろん警戒はしていたはずだが、ここまで完膚なきまでに叩きのめされるとは思っていなかったのだろう。
ノルウェーは近年、国内クラブも力をつけてきている。ラツィオは24/25シーズンのUEFAヨーロッパリーグ(EL)ベスト8で、ノルウェー王者のボデ/グリムトと敵地で対戦し、0-2と敗戦。ホームではPK戦の末に敗れ、敗退の憂き目に合った。
21/22シーズンにはローマがUEFAカンファレンスリーグ(ECL)で4度対戦し、グループリーグでは1-6、ベスト8でも1-2とアウェイではいずれも敗れている。イタリアには分が悪い相手であった。
さらに、負傷により、辞退者が続出。リッカルド・カラフィオーリ、アレッサンドロ・ボンジョルノ、モイーズ・キーンといった攻守の要が代表を去った。そして、フランチェスコ・アチェルビも招集を辞退した。「私は言い訳も便宜も求めない。ただ、敬意を求める。この敬意が、本来チームを導くべき立場の人間から得られないのであれば、私は身を引く方を選ぶ」とSNSに投稿した。
アチェルビの最後の招集は、2023年11月20日の欧州選手権(EURO)予選最終戦のウクライナ戦。その後は一度も呼ばれていない。ドイツと3-3で引き分けたUEFAネーションズリーグ(UNL)準々決勝の第2戦後に、記者からアチェルビ招集の可能性を問われると、スパレッティは「彼が何歳か知っているのか?」と37歳のベテランに対して敬意を欠く発言もあった。
ところが、UEFAチャンピオンズリーグ(CL)準決勝でアチェルビは、その年齢を感じさせないプレーを披露。チームを敗退から救う起死回生の同点弾は、観る者の心を揺さぶった。スパレッティは翻意し、アチェルビの再招集に動いたが、アチェルビの心はすでに離れていた。この2人の対立は、ローマのカピターノ、フランチェスコ・トッティとの確執を再び目の当たりにしているようだった。