ガットゥーゾと深い関係にある戦友の存在
カルロ・アンチェロッティは、ブラジル代表監督に就任し、マッシミリアーノ・アッレグリは、ミランを率いることが決まったばかりだった。ノルウェー戦での完敗はFIGCにとっても想定外の事態であり、その後の対応からは、明確な方針を欠いた場当たり的な人事であることが伺える。ピオリもフィオレンティーナ指揮官就任が濃厚となり、次に候補に挙がったのが、ダニエレ・デ・ロッシ、ファビオ・カンナヴァーロ、ジェンナーロ・ガットゥーゾの3人。そう、2006年W杯を制したレジェンドたちだ。
そして、FIGCは、15日にガットゥーゾの監督就任を正式発表。契約期間は1年、年俸は80万ユーロ(約1億2800万円)と報じられている。グラヴィーナは、「ガットゥーゾはイタリアサッカーの象徴。彼にとってイタリア代表のユニフォームは第二の肌のようなものだ。そのモチベーション、プロ意識、経験は、代表チームが今後の試合に最善の形で臨むために不可欠となる」とコメントを発表している。
テクニカルスタッフには、元ユヴェントスのレオナルド・ボヌッチが加わる。17/18シーズンのミランでは、第15節から最終節までガットゥーゾの下でプレーした。昨年10月からはU20イタリア代表のアシスタントを務め、「3バック守備の教授」とも称されるが、現役引退から1年しか経たない新米コーチだ。
ガットゥーゾの補佐を務めるのは、ルイージ・リッチョ。47歳のガットゥーゾより1歳年上の助監督である。この2人の出会いは今から30年前、1995年に2人が所属したペルージャ時代に遡る。共に南部出身(ガットゥーゾはカラブリア、リッチョはナポリ)という共通点もあり、すぐに意気投合。さらに、2年後には、スコットランドの名門、レンジャーズに揃って移籍し、異国の地で友情を深めた。
その後、ガットゥーゾはサレルニターナを経て、ミランで才能を開花。一方のリッチョは、2002年から所属したピアチェンツァで7シーズンにわたってプレー。02/03シーズンにはセリエAでもプレーしているが、トップリーグでのプレーはこの1年限りだった。10/11シーズンにはセリエBのサッスオーロに在籍。これが現役最後の年となり、2年後、ガットゥーゾが指揮するスイスのシオンで助監督として指導者の道を歩み始める。
ガットゥーゾが監督したチームの9チームすべてでアシスタントを担った。イタリア国内のみならず、スイス、ギリシャ、スペイン、フランス、クロアチアと、ガットゥーゾが行くところに常にリッチョの名があった。2人は互いの子どもの名付け親を務め合うほど、深い絆で結ばれている。
しかし、12年に及ぶ指導キャリアで、2人のコンビで獲得したタイトルは、19/20シーズン、ナポリのコッパ・イタリアだけ。解任は3度、辞任と契約解消がそれぞれ1度ずつだ。15/16シーズンにはピサをレガ・プロ(3部)から昇格させたが、翌シーズンにはセリエBで降格を喫している。イタリア代表監督を託すにはあまりにも物足りないキャリアであり、“お友達内閣”と揶揄されかねない組閣だ。