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コラム 5か月前

新生マンチェスター・シティがもう強い。ユベントス戦大勝は、新たなワールドクラス誕生の瞬間だった【東大分析官の視点】

シリーズ:コラム text by 阪田天祐 photo by Getty Images

アイト=ヌーリが果たした大きな役割

 この日のビルドアップの配置では、ウイングが内側に入り、サイドバックが大外を取ることが多かった。その反面、崩しの局面に入ると、突破力のある両ウイングが仕掛けるために幅を取るため、サイドバックは内側のレーンでのサポートが求められた。アイト=ヌーリに求められるポジショニングは非常に流動的なものであり、難易度が高いはずだった。

 しかし、アイト=ヌーリは、このポジショニングのタスクを見事にこなした。左ウイングのFWジェレミー・ドクが内側に入れば、前進のための幅を確保し、左インサイドハーフのラインデルスが手前を取れば、気を利かせてさらに大外高い位置にポジションを取った。

 CBと中盤に大きな負荷をかけるシティのビルドアップの構造上、前進の過程でアイト=ヌーリがボールに触る回数は少なかったものの、その的確なポジショニングによって、ユベントスのミドルブロックを間延びさせていた。

 そして特に素晴らしかったのが、崩しの局面での貢献だ。まずは4分、左大外でボールを回収したドクが前を向くと、アイト=ヌーリは出し手のタイミングに合わせて左ポケットに抜け出す。一度後ろに切り返して相手の足を止めると、独特だが、なめらかなステップでもう一度切り返し、一気に縦突破した。

 そして、完全に重心を下げていた相手を振り切ると、そのまま左足でファーに正確なクロスを供給し、MFベルナルド・シウバのヘディングシュートを演出した。あれだけ深い切り返しから縦に抜け出し、スムーズに左足でクロスを上げられる選手は、ここ数年のシティには居なかったように思われる。

 さらに、この背番号21の底知れないクオリティの高さが見えたのが、9分の得点シーンだ。シティはユベントス守備陣をほぼ完全にペナルティエリア内に押し込むと、ブロックの手前、それも中央付近にポジションを取ったアイト=ヌーリにパス。引き取ったアルジェリア代表はあえてトラップを外に流し、相手の右WBが食いついたことを確認すると、次のタッチで、その背後に優しいスルーパスを通す。パスは大外から抜け出すドクのタイミングとぴったり合い、鮮やかな先制ゴールが生まれた。

 気の利いたポジショニングと、味方に時間とスペースをプレゼントするパス、それに、巧みなステップワークであまりボールに触らずにぶち抜けるドリブル。アイト=ヌーリは既に、マンチェスター・シティの“武器”である。

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