「笑顔がなければ、いいサッカーなんてできない」
「いろいろなリスクをいつも挙げられてはいるが、ローマが正しい道だと感じた。正しい選択をしたという確信がある」
ローマは、攻撃的スタイルが好まれるクラブだ。97/98、98/99シーズンは、それぞれ4位と5位に終わったが、いずれのシーズンもリーグ最多得点を記録した。この2年間を指揮したのが、超攻撃的サッカーを標榜するズデネク・ゼーマンだった。クラブを優勝に導くことはできなかったものの、このチェコ人は今でも愛されている監督の一人だ。
今回、3年契約を締結したガスペリーニも、セリエAを代表するアグレッシブなサッカーを志向する指揮官である。アタランタでは18/19シーズンからの3年間、3位ながらいずれも最多得点を記録。19/20シーズンには、98ゴールをマークした。これは、51/52シーズン以降のリーグ最高得点記録である。
ゼーマンといえば、スタジアム観客席での階段を使ったトレーニングが有名だ。ガスペリーニは、「彼のことは知ってるが、私は一度も“階段トレーニング”なんてやったことはない(笑)。私のパレルモでの現役時代、ゼーマンはプリマヴェーラ(下部組織)を指導していた。私たちトップチームはセンターサークルで大きな鳥かごをやっていて、プリマヴェーラの選手たちは階段でトレーニングをしていたよ」と現役時代のエピソードを披露した。
アントニオ・コンテと並び、トレーニングが厳しいと評されている“鬼軍曹”、ガスペリーニは続ける。
「私のトレーニングで死者が出たことなどない(笑)。大切なのは選手たちが楽しむこと。私たちは、好きなことを仕事にできているという幸運を持っているのだから。それをローマでできるなら、なおさら幸せに感じるべきだ。トレーニングはすべての職業と同じく、基本中の基本だ。笑顔がなければ、いいサッカーなんてできない」
現役時代にローマでプレーした実績を持ち、7年間、SDを務めたヴァルテル・サバティーニは、ガスペリーニをこう評す。