高井幸大を発掘した人物とは
スパーズが高井を獲得した理由は、192cmという体格とスピード、ビルドアップでの上手さを含むモダンなCBとしての能力の高さや、これまでの成長スピード、将来性を加味してのことだろう。また、欧州のマーケットでは500万ポンドの移籍金は比較的安いことも理由のひとつにあるかもしれない。
まだ世界的なタレントとは言えない20歳の日本人DFを発掘した人物の存在が、その期待の高さを証明している。
『Football London』のアラスデア・ゴールド記者によると、高井の獲得に大きく関わったのは、2023年11月からスパーズのテクニカル・ディレクターを(TD)務めるヨハン・ランゲだそうだ。
彼は今夏に20年以上前から親交のあるトーマス・フランクをスパーズの新監督に推薦した人物であり、スカウトとして優秀な一面を持っている。その得意分野の1つが「若手選手の発掘」だ。
前所属のアストン・ヴィラではシカゴ・ファイアーからコロンビア代表FWジョン・デュランの獲得に大きく貢献。同選手は今冬にアル・ナスルに7700万ユーロ(約123.2億円)+アドオン1300万ユーロ(約20.8億円)というクラブ史上2番目となる高額な移籍金で売却されており、古巣に大きな利益をもたらした。
ヴィラでは主に経験のある即戦力の獲得が求められていたことから彼の“若手発掘“の能力が発揮されるケースは少なかったが、その前に所属していたコペンハーゲンでは選手を安価で獲得して高額で売却するサイクルでチームを強化していた。
例えば、2017/18シーズンに獲得した当時21歳のスロバキア代表DFデニス・ヴァヴロ(現ヴォルフスブルク)とデンマーク代表FWロベルト・スコフ(現ウニオン・ベルリン)は、2019年夏に獲得時の10倍以上の金額で売却。他にもデンマーク代表DFヴィクトル・ネルソン(現ローマ)らの獲得に関わるなど、「育成」と「勝利」を両立させながらチームを強化していた。
彼がTDに就任して以降のスパーズは若手選手の獲得が目立っている。情報をメディアに流さない持ち前の“サイレントディール”で、ウィルソン・オドベールやアーチー・グレイ、ルーカス・ベリヴァルら当時10代の選手を戦力に加えた。
では、なぜ、今夏の高井を含めてスパーズは若手選手を積極的に獲得しているのだろうか。