背番号8の“調節”
静的に横パスを繋いでいるだけでは、10人でバランスよくスペースを守る守備組織を打開することはできない。逆に、スピードを上げて、見つけたスペースに飛び込み続けることは、技術的負荷が高すぎて難しい。
「価値の高いスペースを作って使う」ことを実践するためには、ボールを動かすテンポに緩急をつけ、意図的に相手を動かして空けたスペースを狙う作業が必要だ。
13分のシーンを見て欲しい。バルサが外回しで左から右へと各駅停車で繋ぎ、それについていった相手の守備組織がスライドし切った局面で横パスを受けたペドリは、その2タッチ目、一気に逆サイド奥のスペースに向けてロングパスを飛ばした。
このように、「相手の1stラインを越えたらテンポを上げる」という調節をペドリが施すことで、バルサは相手のスライドが間に合わないうちにスペースを突くことができる。
背番号8は、逆に「あえてゆっくりプレーする」調節で、スペースを突くこともできる。
44分、ボックス左手前でパスを受けると、ゆっくりボールをさらし、相手を引きつけようとした。相手の守備組織が前に釣りだされたその瞬間、ペドリは左サイドに空いたポケットのスペースにスルーパスを刺したのだ。
「スペースを作る・使う」の上流にある、こうしたテンポのコントロール技術によって、ペドリは相手の目線を動かし、価値の高いスペースを生み出したのである。