サンダーランドが大型補強を実現できる理由
サンダーランドは最下位で成す術もなく降格した前回のプレミアリーグ在籍時とは、土台から全く異なるチームだ。
当時3部に沈んでいた2021年に、23歳で会長に就任したキリル・ルイ=ドレフュス氏(27)の下で大規模な変革を行った。
新オーナー誕生に前後して前バーミンガムのクリスティアン・スピークマンがスポーツ・ディレクター、前ブラックバーンのスチュアート・ハーヴェイがスカウト部長に就任。新体制となってから、当初の目標だった5年以内よりも早い4年でのプレミアリーグへの返り咲きを成功させている。
その変革とは“大胆な若手路線”だ。
チームの中心に据えたのが、昇格時に主将を務めていたMFダン・ニールや15歳でシニアデビューを飾ったMFクリス・リグ、GKアンソニー・パターソンのようなユース出身の生え抜きの選手たち。彼らに加え、補強方針も低予算で複数の有望株を集める形へと変えた。
2021/22シーズンからの4シーズンでローンプレイヤーを含めると55人と契約しており、その平均年齢は22.3歳。フリーではベテランを獲得したケースもあるため、完全移籍で獲得した選手に限定すると、平均年齢は20.7歳とさらに若くなる。昨季のプレーオフ決勝のスタメンの平均年齢も23.3歳と若いチームで昇格を果たした。
ただ、若いチームのままでプレミアリーグを戦うことは現実的ではない。
今夏にレジス・ル・ブリ監督のチームは、戦力をプレミアリーグ仕様にするために、8月21日時点で1億6500万ユーロ(約280億円)をマーケットに投じるクラブ史上最大規模の大型補強を行っている。
これらを可能にしたのは、先述した通り、大金をかけることなく低予算で多くの若手選手を獲得する補強方針を掲げていたから。
即戦力としてはネームバリューと実績を併せ持つ選手の方が期待できるかもしれないが、若手の場合は低年俸であり、成長すれば、長期的な戦力になると同時に、獲得時の何倍もの価値がつく。そのため引き抜かれたとしても、そこで得た移籍金をマーケットに再投資することができる。
このクラブが掲げた生え抜きと若手を重宝する強化方針が機能したことが、今夏のビッグサマーに繋がっている。