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コラム 3か月前

「我々はすべてを備えている」パレルモFCは蘇ることができるのか。シチリアの誇りを取り戻すべく、新たなチャレンジへ【コラム】

シリーズ:コラム text by 佐藤徳和 photo by Getty Images

シティ・フットボール・グループ加入がスムーズにいったわけ

 クラブは2017年から2季連続でセリエBを戦ったものの、2014年から2017年にかけて行われた財務上の不正行為により科された勝ち点20のペナルティによってプロリーグから除外された。窮地に陥ったクラブを救ったのが、CFGであった。

 2020年には、すでにパレルモ・フットボール・クラブの名で再スタートを切り、セリエDに落ちた19/20シーズンはグループIで優勝。その2年後には、セリエCのグループCを3位で終えるものの、プレーオフの末にセリエB復帰を勝ち取っていた。そして、2022年7月4日、CFGの傘下に入ることが正式に発表された。

 スタジアムに名を残すレンツォ・バルベーラの孫であり、2019年にクラブ会長に就任したダリオ・ミッリが、CFGへの売却を主導し、これを実現させた。スペインのジローナFCやフランスのトロワACをすでに傘下に収めていたCFGにとっても、パレルモFCは魅力的だった。

 実際、パレルモFCの観客動員数は群を抜いていた。セリエDに降格した2019/20シーズンでさえ、本拠地の初戦サン・トンマーゾ戦には1万6735人ものサポーターが詰めかけている。成績以上の価値をクラブにもたらしていた。

 買収交渉は瞬く間にまとまり、CFGがクラブ株式の80%を取得。残りはミッリ会長と、サポーター有志によって設立された市民団体「アミーチ・ロザネーロ」が保有することとなり、CFGが筆頭株式になった後も、ミッリは会長の座にとどまっている。現在、CFGの持株比率は94.94%にまで拡大している。

 パレルモの熱狂的なサポーターでもあるミッリ会長は「我々がすべてを備えていることは周知の通りだ。世界中で12のクラブを運営してきた企業としての専門知識、資金力、そして経験がある。サッカーに関わるあらゆる取り組みは細心の注意を払って研究されている。セリエAへの到達。これが我々の目標だ」とクラブのビジョンを語った。

 CFGの参入は、サポーターに好意的に受け入れられた。シチリアは古来より、ビザンチン、アラブ、ノルマンといった多様な民族が交差してきた“文明の十字路”である。様々な文化や芸術を排除せずに取り入れてきた歴史があり、シチリア島最大の都市であるパレルモには、現在もアラブ様式の建築物が数多く点在する。

 こうした歴史的背景があることから、アラブ首長国連邦(UAE)の王族であり実業家でもあるマンスール・ビン・ザーイド・アール・ナヒヤーンが設立したCFGの参入も、イタリアの他地域と比べてスムーズにまとまり、両手を広げて歓迎されるような土壌がこの地にはあるのだろう。

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