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コラム 3か月前

「カピターノにはふさわしくない」フロレンツィはなぜロマニスタから批判されたのか。人々を熱狂させた男が背負った重圧【コラム】

シリーズ:コラム text by 佐藤徳和 photo by Getty Images

プスカシュ賞にノミネートされた歴史的な一撃

 ローマでの記念すべき初ゴールは、クロトーネから復帰した12/13シーズン第2節、敵地でのインテル戦で生まれた。ズデネク・ゼーマン監督の下、中盤左サイドで先発起用されると、見事に期待に応える。

 左サイドからのクロスに、2列目からペナルティエリア中央へ飛び込み、ヘディングでファーサイドへ流し込む技ありの一撃を決めた。この絶妙なクロスを供給したのがトッティ。ゴールを決めたフロレンツィは真っ先にカピターノのもとへ駆け寄り、2人を中心に歓喜の輪が広がった。

 2014年9月21日、カリアリをホームに迎えた一戦。すでにアシストを記録していたフロレンツィは、ジェルヴィーニョの落としに反応し、豪快に右足を振り抜いてネットを揺らした。だが、その直後に向かったのは観客席だった。

 テレビ中継のアナウンサーが「どこに行くんだ?」と笑い混じりに声を上げる中、フロレンツィが駆け寄った先には、スタンドで見守っていた祖母の姿があった。2人は言葉を交わすことなく抱擁を交わし、その光景にスタジアム中が拍手で応えた。これ以降、フロレンツィは、“bello de nonna(おばあちゃんのかわいい子)”の愛称で親しまれるようになった。

 そして、フロレンツィを語る上で欠かせないゴールが、2015年9月12日、UEFAチャンピオンズリーグ(CL)のバルセロナ戦での一撃だ。1点のビハインドで迎えた31分、フロレンツィは右ライン際を自陣からドリブルでボールを運ぶと、ハーフウェイラインを過ぎるやいなや、迷わず右足を蹴り出した。

 弧を描いたボールはゴールポストを叩いて、そのままネットを揺らした。バルサのGKマルク・アンドレ・テア・シュテーゲンも茫然自失とする、約55メートルの超ロングシュート。FIFAプスカシュ賞の最終候補にノミネートされる歴史的なゴールとなった。

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