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コラム 3か月前

ノッティンガム・フォレストの真実。なぜヌーノは解任され、ポステコグルーが新監督に? “正反対”の2人を動かしたもの【コラム】

シリーズ:コラム text by 安洋一郎 photo by Getty Images

スタイルが正反対のヌーノとポステコグルー

 ミドルブロック、もしくはローブロックで構えるヌーノ監督のチームは「堅守速攻」のスタイルであり、どちらかと言えば戦い方は「守備的」だ。最大の特徴が非保持の設計であり、相手がボールを保持することを前提として考えつつ、それでも無駄に走らないように工夫されている。

 一方でポステコグルーのチームは通称「アンジェ・ボール」という「攻撃的」なフットボールを展開する。「ハイプレス×ハイライン」が基本で、両SBが中盤化してビルドアップや崩しの局面に関わり、ハイラインの裏は走力が自慢のCBが守る。かなりリスクをかけて戦うことから打ち合いになることが多いのが特徴だ。

 昨季のフォレストとスパーズのスタッツを比較すると、彼らは両極端の数字を残している。走行距離やポゼッション率、クリーンシート数、パス成功数、ドリブルの試行回数、キャリーの距離などは上位と下位でハッキリと分かれており、似たようなスタッツを残したのはロングパスの試行回数ぐらいだ。

 この根本的なスタイル変更によって、大きな影響が出ると予想しているのが、走行距離に基づく怪我人のリスク管理である。

 昨季のヌーノ監督のフォレストは、プレミアリーグで最も走行距離が少なく、怪我人が出にくいフットボールを展開していた。すなわちシーズンの大半でベストメンバーをキープしており、これが安定して成績を残すために重要な要素だった。

 一方でポステコグルーが率いた昨季のスパーズは怪我人が続出。これはプレミアリーグのトップ3に入る走行距離の多さも影響しており、特にハイラインのカバーを任されるCBを中心に筋肉系のトラブルが多かった。

 ポステコグルーのチームに怪我人が増えるのは、積極的に自分たちでアクションを起こすフットボールのスタイル的には仕方ない部分もある。

 これはオーストラリア人指揮官も認めている点であり、スパーズの監督時代にも「クラブに移籍して1年目は、いつも怪我が少し増える」と明かしている。

 ただ、今季のフォレストは夏にフロント主導の“欧州仕様“の大型補強を行っており、昨季よりも明確に選手層が厚くなった。それもヌーノのスタイルに適した選手を補強している訳ではなく、メンバーを見てもどちらかと言えば新監督に適した選手が多いように感じる。

 シーズン途中の監督就任はプレシーズンがないことも影響して簡単ではない。21世紀のフォレストにおいて最も結果を残した監督の後任というハードルの高さも、サポーター視点では気になるところだ。

 それでもポステコグルーは人心掌握に長けた人物でもあり、途中就任でも強いチーム作りができるかもしれない。昨季のスパーズではあれだけリーグ戦でボロボロだったにも関わらず、選手からの信頼は最後まで厚かった。

 マリナキスの決断が「吉」と出るのか「凶」と出るのか。

 これだけスタイルが異なれば、失敗に終わる可能性が高いというのが多数の意見になるだろう。しかし、私情の入った監督人事は上手く行くわけがないと思ったヌーノが大成功だったことを踏まえると、好転する未来もある。

 まずは新体制での初陣となる13日のアーセナル戦にて、どれだけの変化がみられるのか。新たなスタートを切るフォレストの歩みに注目だ。

(文:安洋一郎)

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【了】

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