移籍市場で苦戦を余儀なくされた理由
今夏の移籍市場を通してアストン・ヴィラを悩ませていたのが、プレミアリーグよりも厳格なUEFAの財務規則である。
今年7月には、UEFAのスカッド・コスト・ルール(SCR)に違反したことに伴う処分が下されていた。この規則はクラブの収入に対する人件費を一定の割合よりも低く収めることを義務付けるものであり、昨季の場合は80%以下という決まりだった。
このルールは2023/24シーズンの上限90%から段階的に割合を下げており、2025/26シーズンからは最終的な目標ラインである70%に下がる。
昨季のアストン・ヴィラは収益に対する人件費が80%を超過しており、今夏の処分を受けて大幅に割合を下げる努力をすることが求められていた。
そのため人件費が上がる新加入の選手の補強が積極的に進まず、それとは対照的に人員整理をする形で、契約が残っていたフィリペ・コウチーニョやレアンデル・デンドンケル、アレックス・モレノら余剰戦力をフリーで放出した。
アストン・ヴィラは一定の条件を満たさなかった場合に、今季のUEFAクラブ大会におけるリストAへの新規選手登録を制限することにも同意していたが、結果的には全選手を登録している。ひとまず最低限の目標を達成することができたと解釈できるだろう。
一方でルールを遵守したことで、移籍市場に大きな制限がかかったのも事実であり、多くの選手の去就が不透明だったことからチームがまとまりづらい環境にあった。
前主将で、DFリーダーのタイロン・ミングスも開幕戦後のインタビューで「移籍市場が開いている最初の数週間は難しい。ここにいる選手たちにとって、グループの集中を保つことが重要だ」と、難しさが伺える発言を残している。