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コラム 3か月前

アストン・ヴィラに何が起きているのか。開幕4試合で0ゴール…。戦力的には十分も、絶不調に陥った明確な理由とは【コラム】

シリーズ:コラム text by 安洋一郎 photo by Getty Images

得点力不足の理由

 これらの問題をエメリは解決できるだろうか。なお、オーナー陣は彼に全幅の信頼を置いており、自らが退任を望まない限りは、基本的に解任の選択肢がないと考えられる。

 スペイン人指揮官は、昨季の第27節にてクリスタル・パレスに1-4の大敗を経験したことを受けて守備を調整。それまでのベースだった非保持における「ミドルブロック×ハイライン」からは微調整が加わり、試合や展開によってはハイプレスで前から相手を捕まえる試合やリトリートで守る機会も増えた。

 この微調整が功を奏して、昨季はラスト11試合で8勝1分2敗と多くの勝ち点を稼ぐことに成功。6試合で完封勝利を収め、一時は二桁順位に沈んでいたところから巻き返して、最終的にはUEFAヨーロッパリーグ(EL)出場権を獲得した。

 今季もこの守備を重視した戦い方を継続しており、CBのレギュラーもパウ・トーレスからミングスへ変わった。実際に開幕4試合では2試合で無失点に抑えており、守備ではある程度の結果が出ていると言って良いだろう。

 しかし、攻撃はからっきし機能していない。攻守のリンクマンとなるボランチの怪我人続出もその要因の1つではあるが、最大の理由はライン間でボールを受けるモーガン・ロジャーズの絶不調だ。

 プレシーズンに負傷したイングランド代表MFを開幕戦にぶっつけ本番という形で間に合わせたが、昨シーズンに披露していたパフォーマンスレベルには全く達していない。

 4節終了時点でのパス成功率は64%とプレーの正確性に欠けており、最前線のワトキンスやワイドの選手に展開する前に中盤でボールを何度もロスト。戦術的にロジャーズがライン間でボールを受けてからドリブルやスルーパスでチャンスを作る設計になっており、彼のクオリティが上がってこない限りは攻撃が機能しない。

 移籍市場の最終日に加入したエリオットとサンチョには、現状は我慢して起用されているロジャーズの負担を和らげる役割が期待されている。彼の復活、もしくは2列目の新戦力が機能すれば、チャンスの回数が増えて得点力不足も改善されるだろう。

 しかし、早いタイミングで成功体験が訪れなければ、チームに不穏な空気が流れ続ける。1試合でも早く多くの得点を奪い、初勝利を収めることが巻き返すためには必須だ。

 エメリには昨シーズンに8試合未勝利の状況からチームを立て直した実績がある。しかし、当時よりも現在の方が問題は深刻なように映る。彼自身を含めた、チームのメンタリティを取り戻すことができるかどうかが重要になるだろう。

(文:安洋一郎)

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【了】

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