ストライカー覚醒の要因
マテタの覚醒こそ、グラスナーの就任以前・以後におけるチームとしてのスタイルの変化を表しているだろう。
それまでのクリスタル・パレスは堅守速攻をベースに、守備は組織的に粘り強く守る一方で、攻撃はウィルフレッド・ザハやエベレチ・エゼらドリブラーの個人能力の高さを活かした単騎攻撃に依存していた。
そのため最前線のマテタは孤立することが多く、得点に絡む機会が限られていた。
一方のグラスナーは堅守を維持しつつも、攻撃はストライカーを軸(頂点)に、組織として多くのチャンスを作ることを目指している。
システムは主に[3-4-2-1]を使用し、最前線の選手を2人のシャドーと近い距離感でプレーさせることで孤立させず、両WBを絡めた厚みのある攻撃を展開。その結果、マテタがフィニッシュの場面に顔を出す機会が増え、得点量産に繋がったと考えられる。
このスタイルの変化はチーム全体のドリブルの試行回数に現れている。
グラスナーが指揮を執っていない2022/23シーズンはプレミアリーグで2番目に多い784回を記録していたのに対し、昨シーズンはリーグで最も少ない500回に留まっていた。
重要なのは、個人能力の高い選手をチームとしてオーガナイズする中でも彼らの長所は消えていないということ。組織と個人のバランスを上手くとれているのが今のクリスタル・パレスの強みだ。