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コラム 1か月前

「見える景色も変わってきた」高橋はなは「自分にしかできない仕事を」。なでしこジャパンで「世界相手にどれだけ通用するか」【コラム前編】

シリーズ:コラム text by 竹中愛美 photo by Editor

 SOMPO WEリーグでは所属の三菱重工浦和レッズレディースの攻守両面で圧倒的な存在感を発揮し、なでしこジャパン(サッカー日本女子代表)でもそのポテンシャルの高さを遺憾なく示している高橋はな。AFCアワード2025でアジアの最優秀選手にも選ばれたばかりの25歳に今の胸の内を語ってもらった。(取材・文:竹中愛美)

【単独インタビュー/取材日:10月19日】

AFC年間最優秀女子選手賞を初受賞した高橋はな「1番思ったのは…」

三菱重工浦和レッズレディース 高橋はな

【写真:編集部】

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 取材場所に現れた高橋はなはいつものように笑顔だった。

 日本時間10月25日のイタリア女子代表戦、29日のノルウェー女子代表戦のヨーロッパ遠征のメンバーに選出されたのが15日。なでしこジャパン選出のその翌日にはAFCアワード2025で女子の年間最優秀選手賞を受賞した。

 澤穂希や宮間あや、熊谷紗希らに続く日本人6人目の快挙という旬な高橋に、代表活動出発前に話を聞くことができた。

「素直に嬉しかったです。でも、本当に1番思ったのは、私だけの力では絶対に受賞することができなかった賞ではあるので、普段支えてくださる方々、そして、このクラブもそうですし、家族にも、たくさんの方に感謝の気持ちでいっぱいだなと思いました」

 AFC女子チャンピオンズリーグ24-25で三菱重工浦和レッズレディースの準々決勝進出に貢献し、去年は皇后杯で優勝も経験。代表でもパリオリンピックで全4試合に出場し、今年のシービリーブスカップではなでしこジャパンの初優勝に貢献し、初受賞となった。

「評価していただけたことはすごくありがたいなとは思いましたけど、驚きの方が強かったです」と受賞できるとは思っていなかったという。

 浦和の先輩でもある清家貴子も受賞した賞に「前回、清家選手が取っていたことも知っていたので、(受賞者の)名前を見ても名誉ある賞をいただけて本当にすごく光栄に思いましたし、改めて気が引き締まりました」と率直な気持ちを明かしてくれた。

 クラブでは今季、新たにキャプテンを託され、ここまで11試合すべてにフル出場し、チームの堅守を支えている。前半戦を終え、順位は2位と好調だ。

 チーム成績に対して、高橋自身のプレーの出来も比例しているのかと思えば、どうやら違うらしい。

「まだまだだな」充実したシーズンでも高橋はなは自身に目を向ける

三菱重工浦和レッズレディース 高橋はな

【写真:©URAWA REDS】

「きのうの試合(第11節・セレッソ大阪ヤンマーレディース戦)でも結果としては無失点で良かったなとは思いますけど、プレーを振り返ったときにまだまだだなって思うシーンはたくさんあるし、もっとできるなって思うこともたくさんあるので、まだまだだなと思いますね」

「まだまだだな」というのはどういう部分を指すのか。具体的に聞くと、プレーの強度や判断のところだという。相手のプレーに助けられている部分もあれば、自身にミスも起こる。そうした細部を極めていくことが大事だとした。

 自己評価が厳しいのは手応えと課題について聞いたときも同様だった。

「私自身もいろんな引き出しをいただいて、サッカーの幅もすごく広がったのは感じますし、考えることがすごく増えて、自分の中の見える景色もまた変わってきた。

 今までやってきたことにプラスして、新たにいろんなものを吸収できているので、すごく学びのある毎日を過ごせていると思います。でも、その中でできていること、できていないことははっきりしているので、自分の課題に向かってやるべきことはたくさんあるなというのは思います」

 プレーの幅をさらに広げるために、今年挑戦していることがある。

「結構チャレンジしてるのはビルドアップのところ。自分自身もいろんなバリエーションを増やそうとチャレンジをしているので、それが試合の中で出せるシーンも増えてきているので、続けていきたいなと思います」

 さらに、「ビルドアップに対してまだまだミスは多いので、そこを完璧にできるぐらい、もっと高めていきたい」と語った高橋。サッカーに対する向上心は尽きない。

「シンプルに守備の対応のところ、対海外となったときにいろんな要素、大きく言えばフィジカルですけど、もっともっと必要になってくると思うので、そこの強化はもっとしていきたいです」

 自身の現在地をしっかりと冷静に見つめられているからこそ、今やるべきことが何か、自分に足りないものが何か、自然と見えてくるのだろう。

CBとFWどちらも高いレベルでこなす高橋はな。現時点での両ポジションに対する考え方とは?

三菱重工浦和レッズレディース 高橋はな

【写真:編集部】

「しっかり自分に向き合うのはやんなきゃいけないなと思います。でも、本当に自分自身まだまだだなって感じるので、やることだらけだなって思うので、毎日必死です」と無邪気に笑ってみせた。

 ひたむきに努力を積み重ねる高橋の魅力は笑顔もさることながら、センターバック(CB)とフォワード(FW)のふたつのポジションを高いレベルでこなせることも入ってくるだろう。

 サッカーをはじめたときは前線のポジションを務めることが多かったそうだが、2017年のAFC U-19女子選手権のときに本格的にCBにコンバートされた。

 昨季はシーズン前半戦に主にCB、後半戦は主にFWとしてプレー。リーグ最少失点の堅守を支えただけでなく、チーム最多の7ゴールを挙げた。

 今年7月に行われた東アジアE-1サッカー選手権2025決勝大会 韓国でもCBとFWを務めたことも記憶に新しい。

 愚問かもしれないが、CBとFWのふたつのポジションに対する高橋の現在の考え方について聞いてみた。

「私自身はどちらもやれるのはサッカー選手としてひとつの強みだとは思うので、自分にしかできない仕事をやり続けていきたいなとは常に思っている。守れるし、攻められるし、どちらも極めていきたいなっていうのが今の思いです」

 二刀流と言えば聞こえはいいが、高橋自身は「シンプルにどちらが好きですかってよく聞かれるんですけど、やりたいとかそういうの関係なしに好きなのは普通にFWです!」とまた大きく笑って答えてくれた。

 高橋にとってはCBとFWでプレーすることすらも自身のプレーの幅を広げるためのものに過ぎないのかもしれない。

「究極を言えばサッカーなので…」「日本を背負うところは新たに気持ちを入れ直さないといけない」

なでしこジャパンの高橋はな

【写真:Getty Images】

「究極を言えばサッカーなので、全てのポジションを私はできるようになりたいです。全てのポジションを極められれば最強だと思うので、そこが理想ですけど、11人でやるスポーツで中々そうもいかない。

 でも、せっかくやれるチャンスがあるのであれば、どちらも極めていきたいなと思いますし、片方をやることによってまた武器が増えるっていうか。例えばFWをやってたらCBをやるときにFWをやってたからこそ活きることってすごくたくさんあるので、そういった意味でも年々自分の中の幅が広がってると思います」

 プレーの幅を広げている高橋がなでしこジャパンとして、進化した姿を世界の舞台で見せる機会がやってきた。まずは今回のヨーロッパ遠征でその力を発揮したいところだ。

「日本を背負うところは本当にまた新たに気持ちを入れ直さないといけないことだと思います。その中で自分にできることは何かって考えたときに今、堀(孝史)監督のもとやってきたことが世界相手にどれだけ通用するのか、自分自身チャレンジできることがすごく楽しみです。

 代表選手たちが久々に集まってやるサッカーも楽しみですし、その中でも自分がどこまでやれるようになったかは、たくさんチャレンジして帰っていきたいなと思います」

(取材・文:竹中愛美)

【NEXT HOME GAME】
2025/26 SOMPO WEリーグ 第13節 
三菱重工浦和レッズレディース対INAC神戸レオネッサ
11/8(土)14時キックオフ 浦和駒場スタジアム
→詳細はこちらから!
 

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【了】

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