AFCチャンピオンズリーグエリート(ACLE)リーグステージMD4、FC町田ゼルビア対メルボルン・シティが4日に行われ、1-2でメルボルンCが勝利した。今年8月にアビスパ福岡からメルボルンCに完全移籍した金森健志は、貴重な役割を担ってチームに貢献していた。(取材・文:大島和人)
「(金森)健志の投入はチームに大きな違いをもたらす」
メルボルン・シティはAFCチャンピオンズリーグエリート(ACLE)のリーグステージMD4(第4日)にFC町田ゼルビアとアウェイで戦い、90+4分の劇的な決勝ゴールで2-1と勝利した。
開始早々に幸運なオウンゴールで先制したものの、その後は一方的に攻められる厳しい展開で、前半を1-1で終えている。しかし後半は五分近くまで立て直し、それが後半アディショナルタイムの勝ち越しにつながった。
メルボルンCはオーストラリア屈指の強豪クラブ。MD1にサンフレッチェ広島、MD2はヴィッセル神戸に敗れているが、町田戦でJリーグ勢から今大会初勝利を挙げている。リーグステージ通算2勝2敗として、グループステージ突破に一歩前進した。
勝利の立役者はまず再三のピンチをしのいだGKパトリック・ビーチだろう。ただアウレリオ・ビドマー監督は、試合後の記者会見で31歳の日本人MFを称賛した。
彼はこう振り返っている。
「ハーフタイムに、いくつか調整を加えました。(金森)健志の投入はチームに大きな違いをもたらし、私たちが試合を少しコントロールできるようになりました。悪いボールの失い方が減り、後半は私たちにとっていい流れとなりました」
「健志を投入した理由は…」「監督がうまく修正しました」
メルボルンCにとって最大の脅威は、町田の左シャドーに入った相馬勇紀だった。町田は左ウイングバック増山朝陽が相馬とスイッチして左中間からシュートを打てるエリアに侵入してくる。そこに左CBの中山雄太やボランチの下田北斗を絡めて、「相馬を自由にする」ような連動もする。
まず右サイドの守備を立て直すために、金森の貢献があった。ビドマー監督は続ける。
「健志を投入した理由は、相手の左サイド、特に相馬に危険なプレーが多かったからです。私たちはそこを改善しようと試みました。後半は前半ほど(町田の)左サイドにボールが回らなくなり、そのエリアを少しコントロールしやすくなりました。彼の貢献は大きかったと思いますし、経験でチームを助けてくれました」
金森はこう説明する。
「僕が入って意識したのは、(町田の)キーパーが持ったときに、もうちょっとラインを全体的に押し上げて、蹴らせて回収するところです。サイドのポジショニングと全体の『下がりすぎ』だったところ、セカンドボールを意識して、監督がうまく修正しました。
前半はサイドがちょっと低くて、引き出されて相馬選手に渡る場面が多かったので、そこにまず出させないことは意識しました。浮き球で出されたときの、プレスバックも意識しました」
若手が多いメルボルン・シティで輝く
相馬についてはこう口にする。
「危険な選手だし、前半を見たら結構やられていたので、そこは意識しました。僕自身もプレスバックして、サイドバックをヘルプしなければいけませんでした」
前半の町田は左サイドに人をかけて押し込んでいた。メルボルンCがボールホルダーを捕まえようとして寄ると、相馬がすれ違いざまに切れ込んでくる。そんな悪循環を断ち切ったのが金森のクレバーな、先手を打った位置取りだった。
45分の出場時間で、まず[4-2-3-1]の右サイドハーフとして試合に入り、ボランチ、トップ下と3つのポジションをこなした。セットプレーのキッカーも、右足で蹴る場面は任されていた。
ビドマー監督が語ったように、31歳の金森は若手の多いチームの中で「経験豊富なベテラン」の立ち位置だ。今の彼には高いスキルの発揮にとどまらない「いぶし銀」「便利屋」の役割がある。
金森は言う。
「僕自身もっと成長したいという気持ちで移籍しましたし、プレーの幅も広がるなと思いながらプレーしています。(Aリーグには)フィジカルの強い選手が多いですが、スペースは結構あって、ボールを持てる時間が長いので、すごく楽しいです」
オーストラリアにない強みをもたらし、日本にないモノを学ぶ
金森は福岡県出身で、2025年夏までアビスパ福岡に所属していた。今日のスタンドにはアビスパサポーターが出した金森の横断幕も見えた。
「福岡のファンも駆けつけてくださって、すごく嬉しいです。自分の頑張る力に今日はなりました」
94分の決勝ゴールは、CKのこぼれ球に金森が反応し、ミドルを放った流れからだった。彼はアウェイの難しい展開を勝ちきった喜びをこう言葉にする。
「僕のシュートが相手に当たって、味方が2回くらい蹴って入りました。とにかく、勝ち点を拾いたかったし、最後は『アウェイなので勝ち点1でも』という気持ちでしたが、勝ち点3が取れてよかったです。今日の勝ちは(突破に)すごくつながる大きな勝利だったと思います。帰ってメルボルンダービーがあるのでそこも楽しみですが、町田戦は素晴らしい1勝になりました」
今日の試合は不在だったが、町田にもオーストラリア代表FWのミッチェル・デュークがいる。選手が国境を超えて「相手の国にない強み」をもたらし、同時に自分の国にないモノを学ぶ。そうやってチームと人は成長し、フットボールの文化は各国で豊かになっていく。
金森がオーストラリアで実りある日々を送り、メルボルンCの貴重な戦力になっているーー。そこがよく伝わった4日のACLE町田戦だった。
(取材・文:大島和人)
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