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コラム 4週間前

もはや国内の関心はサッカーよりテニス。イタリア代表に明るい未来はあるのか。他国の脅威にはならない…転落ぶり【コラム】

シリーズ:コラム text by 佐藤徳和 photo by Getty Images

 イタリア代表はFIFAワールドカップ(W杯)26欧州予選でグループ2位に終わり、3大会連続でプレーオフに回ることになった。同予選最終節のノルウェー代表戦では、一矢報いるどころか、ホームで4失点大敗。実に70年ぶりの不名誉な記録も生み出してしまった。もはやイタリア代表は、他国が恐れる存在ではない。なぜ、これほど周囲との差がついたのか。そして、彼らに明るい未来は待っているのか。(文:佐藤徳和)[2/2ページ]
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守備の国というアイデンティティーを失った

 ハーランドの2点目のシーンでは、フェデリコ・ディ・マルコが、理解しがたいことにマークを外してしまった。

 逆転されたショックは大きく、その80秒後には、アレッサンドロ・バストーニの不用意なパスミスから、ショートカウンターをくらい、3点目を献上。最後は、マンチーニがラーセンのドリブルに翻弄されて、とどめを刺された。

 サッキが指摘したようにいくつかの“あり得ない”ミスが重なったことも敗因ではあるが、先発メンバーの選定にも疑念を抱く。

 ジョヴァンニ・ディ・ロレンツォの起用だ。0-3と敗れた6月6日のノルウェー戦でも、ヌサにいいようにやられた。最近のナポリでのパフォーマンスも精彩を欠き、今は起用される理由が見当たらない。

 今回の一戦でも、相手との対峙でいとも簡単に抜き去られていた。ピークを過ぎた感は否めない。ユーロ2020(欧州選手権)優勝メンバーで、代表の功労者ではあるが、ガットゥーゾには外す勇気を見せてほしかった。

 アッズーリが、W杯予選で二桁失点を喫するのは初めてのことだ。1974年大会は6試合無失点、1998年大会はイングランドと同組ながら8試合1失点、2002年大会は8試合3失点、本大会で優勝した2006年大会は10試合8失点だった。

 前回大会は、8試合でわずか2失点無敗ながら1位通過を逃し、プレーオフで敗れた。今大会の8試合12失点は異常な数字だ。

 イスラエル戦でも4失点し、完全に守備が崩壊。攻め込まれるといとも簡単に失点し、粘り強さが全くない。かつて『カテナッチョ』と称された(あるいは揶揄された)堅守の面影は、今のイタリアには見られない。守備の国というアイデンティティーを失ってしまった。

 では、イタリアはどうすれば、プレーオフを勝ち進むことができるのか?

 サッキは、「まずは我々の限界を認識することが必要だ。そのためには、謙虚な気持ちが必要だ。小学校1年生にアルファベットを教える教師のように振る舞わなければならない。そしてこれは誇張ではない。システムだの、戦術だの、攻撃のパターンだのという話を耳にするが、もっと基礎の概念をしっかりと叩き込まなければならないということを理解すべきだ」と主張する。

 さらに、「3月のプレーオフの前に合宿を行うべきだ。ガットゥーゾが数日間指導し、今回の惨敗後にチームを再結集させ、精神的にも充電し直し、うまく機能していない部分を修正できるようにすべきだ」とトレーニングキャンプの必要性を訴える。

 しかし、クラブがタイトなスケジュールの中で、貴重な時間をイタリア代表に与えることができるだろうか。仮に、許可したとしても最大で2日がいいところだろう。

 また、この一戦のテレビ解説を務めたダニエーレ・アダーニは、YouTubeの番組『Viva el Futbol』でこのように語った。

「それがイタリア代表を脆くしているのだ」

「テクニックと戦術を与えられたからといって、それだけでサッカーはできない。フィジカル、メンタリティ、チームスピリット、自覚が必要だ。

 1年前に欧州選手権にさえ出場できなかったチームが、今や我々の前を走っている。過ちを認めるべきだ。25得点の差、勝ち点6の差、直接対決でトータル1-7となった。今この時点でノルウェーがイタリアより強いことを認めないのなら、それは嘘になる」

 さらに、こうも述べる。

「ノルウェーのDFは守備を一つのブロックとして機能させ、100分間、常に集中力を保たなければ、チームとして通用しないということを知っている。彼らは謙虚なチームだ。全体が一つのブロックになり、他のセクションと連動して守備を構築することで、DFに“信頼性”が生まれている。

 一方のイタリアはどうか? 個々では全員が多くのことができる。だが、チームになると、必要な保証を提供できていない。我々は強豪には敗れ、格下相手には危うくなる。私が本当に心配しているのは、90分間、集中して戦い抜くチームを一度も見たことがないことだ。

 イタリア代表には、UEFAチャンピオンズリーグ(CL)決勝を戦った選手もいれば、スクデットを獲った選手もいる。それなのに、そのレベルですらあまりにも多くのミスをしてしまう。それがイタリア代表を脆くしているのだ」

 ノルウェーの先発メンバーは、全員の所属クラブが異なっていたが、イタリアは、インテルの5選手を先発メンバーに起用して、“ブロック”を敷いた。しかし、守備面での効果は見られなかった。

 確かに、ハーランドほどの怪物プレーヤーは今のイタリアには存在しないが、それ以外の選手を見れば、特にイタリアが見劣りしているわけではなかった。

 そして20日、ついにプレーオフの対戦相手が決まった。準決勝は北アイルランドとの対決だ。3月26日、ホームで、現時点ではアタランタの本拠地、ベルガモでの開催が有力視されている。

 決勝は、ウェールズ対ボスニア・ヘルツェゴヴィナの勝者とぶつかる。こちらは31日、アウェイでの一戦だ。

 スイス・チューリッヒにあるFIFA(国際サッカー連盟)本部で行われた抽選を見届けたガットゥーゾは、イタリア・メディア『RAI』のインタビューに応じ、北アイルランドについて「自分たちのスタイルを持っていて、非常にフィジカルなチームだ。セカンドボールへの競り合いでも粘り強い」との見解を示した。

 さらに「ウェールズとボスニアの両チームのことはよく知っている。(ウェールズの)カーディフのスタジアムは誰にとってもやりづらい場所だ。だが、今は準決勝に集中しなければならない」と語った。

 果たして、イタリアは、3大会ぶりとなるW杯本大会出場権をもぎ取ることができるのだろうか。

(文:佐藤徳和)

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【了】

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