FIFAワールドカップ(W杯)2026の組み合わせ抽選会が現地時間6日に行われた。イタリア代表はまだ本大会出場を決めていないが、仮に欧州プレーオフを突破した場合は、開催国カナダ、スイス、カタールと同じグループに入る。この組み合わせについて、現地はどう評価しているのだろうか。(文:佐藤徳和)[2/2ページ]
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イタリア代表の敵は移動距離も
初戦は6月12日、開催国カナダとの対戦だ。球技専用スタジアムであるトロントのBMOフィールドで行われる。
完全アウェイとなる可能性が高いが、収容人員は約3万人と大きな脅威になるとは言えない数字だ。6月の平均最高気温は25.3度であり、暑さの心配もほとんどない。
18日の第2戦では、アッズーリはスイスと対戦。トロントからロサンゼルスのSoFiスタジアムまで、およそ4000キロの移動を強いられる上、3時間の時差もある。
一方、スイスは第1戦をサンフランシスコでカタールと戦う予定で、移動距離は比較的短い。SoFiスタジアムは屋根付きの球技専用スタジアムで、収容人数は約7万人に達する。
このグループ最大の難敵との一戦は、移動や時差の影響も含め、厳しい条件が重なることになるだろう。
GS最終戦となる24日のカタール戦は、シアトルのルーメン・フィールドで開催される。こちらも収容人数は約7万人前後だ。
ロサンゼルスからの移動距離は約1800キロで、トロントからロサンゼルスへの移動よりは短いものの、ミラノからパレルモまでの距離よりは長く、決して軽視できない負担となる。
GSの3試合は、幸いにも南部の酷暑や1000メートル、2000メートルを超える高地での試合は回避されたが、このグループでは、長距離移動による負担が最大の敵となる可能性がある。
できれば第3戦を迎えるまでに決勝トーナメント進出を決め、主力選手を温存する余裕を持ちたいところだ。
決勝トーナメントについても予想してみよう。
韓国代表にリベンジする絶好の機会が訪れる!?
イタリアはここでも、くじ運に恵まれたと言える。
GSを1位で突破した場合、ベスト32ではグループE、F、G、I、Jのいずれかで3位となったチームとの対戦だ。一方、2位通過の場合は、グループAの2位との対決となる。
このグループAには、開催国の一つメキシコのほか、韓国、南アフリカ、そして欧州プレーオフ勝者の1か国(チェコ、アイルランド、デンマーク、北マケドニアのいずれか)が入っている。
ちなみに、イタリアはこれまでメキシコと12回対戦しており、7勝4分け1敗と大きく勝ち越している。
韓国とは過去2度対戦しており、そのどちらもW杯本大会での対戦だった。1986年メキシコ大会ではグループリーグで3-2と勝利し、2002年日韓大会ではあの“因縁の”ベスト16で1-2と敗れている。
もし韓国との再戦が実現すれば、あの時の雪辱を果たす絶好の機会となるだろう。
ここまではもちろん、イタリアがプレーオフを勝ち抜いた場合の想定の話だ。イタリア・サッカー連盟(FIGC)のガブリエーレ・グラヴィーナ会長は、その可能性に楽観的な姿勢を見せている。
「3月まではもうあまり時間がなく、冬のあとには必ず春が来る。私の楽観は、ノルウェー戦の後半を差し引けば、これまで私たちをここまで導いてきた歩みといった客観的要素、具体的根拠の上に成り立っている。目標は手の届くところにある。さあ腕まくりをして、皆で力を尽くそう」
こうした発言に反発するのは『コッリエーレ・デッロ・スポルト』紙の名物編集長イヴァン・ザッザローニだ。
W杯ベスト32よりも出場することが難しい
「グラヴィーナの言葉に納得したイタリア人は、おそらくほとんどいない。国民は3月の決戦に対して、当然の不安を抱いているからだ。なにしろ、スウェーデン、北マケドニア(しかもマケドニアの一地域でしかない)との過去の惨敗が、いまだ重くのしかかっているのだから」と皮肉まじりに、FIGC会長の“お気楽な”コメントを批判した。
まずはプレーオフ突破。これがイタリアに課された至上命令だ。3大会連続のW杯不出場となれば、もはやイタリアは3流国に成り下がる。
「いかに楽観主義者であっても、イタリアのサッカーを正当化する者であっても、“今のイタリア代表の実力は、ヨルダン、カタール、キュラソーといった国と同レベル”であることを認めざるを得なくなるだろう」とザッザローニは訴える。
『ラ・ガッゼッタ・デッロ・スポルト』紙のステファノ・アグレスティもプレーオフの戦いに向けて、警鐘を鳴らす。
「ワールドカップに出場するよりも、その後、GSを突破してベスト32に駒を進め、さらにはその先まで勝ち進む方が簡単かもしれない」とプレーオフが容易な戦いではないことを強調する。
さらに、「カナダ、スイス、カタールのことを考えるのは、すべてがうまくいった場合、すなわち、3月31日の夜以降だ。それでも、比較的楽なグループが待っているという事実は、無視できることではない。
我々のように、技術やフィジカルよりもメンタルに問題を抱えるチームにとっては、自信を与えてくれる要素になりうる。まずは、プレーオフの2試合をしっかりと乗り越えよう。そうすれば、きっと楽しい展開が待っている」と語っている。
兎にも角にも、3月26日の北アイルランド戦、そして31日、アウェイでの決勝戦を勝ち抜かなければ、W杯の扉は開かれない。
この険しい道を乗り越えることができれば、アッズーリは精神的にも一層逞しくなり、開催国の声援や移動距離、時差といった不利な条件にも左右されずに戦い抜く力を身につけられるはずだ。
(文:佐藤徳和)
【著者プロフィール:佐藤徳和】
1998年にローマでの語学留学中に、地元のアマチュアクラブ「ロムーレア」の練習に参加。帰国後、『ポケットプログレッシブ伊和・和伊辞典』(小学館)の制作に参加し、イタリア語学習書などの編集、校正、執筆に携わる。2007年から、フリーランスとして活動し、主にイタリア・サッカー記事のライティングに従事。2014年には、FC東京でイタリア人臨時GKコーチの通訳を務める。IL ROMANISTA、日本特派員。『使えるイタリア語単語3700』(ベレ出版)、『イタリア語基本の500単語』(語研)を共同執筆。日伊協会では、カルチョの記事を読む講座を開講中。X:@noricazuccuru
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