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コラム 11時間前

「解決策を伝えに来たわけじゃなくて」ニールセン監督就任1年。なでしこジャパンは内側から変わった。「選手の理解度が上がっている」【コラム】

シリーズ:コラム text by 竹中愛美 photo by Editor, Getty Images
なでしこジャパン ニルス・ニールセン監督

報道陣の取材に応じるなでしこジャパンのニルス・ニールセン監督【写真:編集部】



 なでしこジャパン(サッカー日本女子代表)は12月2日に行われたカナダ女子代表との国際親善試合を1-0で勝利し、年内最後の活動を2連勝で締めくくった。ニルス・ニールセン監督は4日、千葉市内で取材に応じ、「なでしこ初の外国人監督は過去に選手もスタッフも経験しなかったので、何が良い方法なのかを探りながらの1年」と就任1年目を総括した。(取材・文:竹中愛美)
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なでしこジャパン就任から1年…ニールセン監督が挙げた課題点とは

なでしこジャパン

今年2月のシービリーブスカップで初優勝を果たしたなでしこジャパン【写真:Getty Images】

「最初に関して言えば、良いスタートが切れたかなと思います。ただ、中盤にかけて徐々に難しい面も見えてきた。通訳を介しての会話に問題があったが、うまく解決策を見つけられたかなというふうに思っています」

 昨年12月になでしこジャパン初の外国人監督として就任したニルス・ニールセン監督。初陣となった今年2月のシービリーブスカップでは13年ぶりにアメリカ合衆国女子代表を破り、初優勝を飾った。

 ところが、4月以降に行われたコロンビアやブラジル、スペイン女子代表との親善試合では4試合白星から遠ざかり、国内組を中心に新たな選手を起用した7月の東アジアE-1サッカー選手権では3連覇を逃し、3位に終わった。

 10月のヨーロッパ遠征でもイタリア女子代表に引き分け、ノルウェー女子代表には0-2の完敗を喫するなど、指揮官が語るように幸先よくスタートを切った後は中々結果がついてこなかった。



 ここで、冒頭にニールセン監督が触れていた問題点に話を戻す。課題に挙げていたのはコミュニケーションの部分だ。

 これまではニールセン監督が英語で選手たちに説明したあとに通訳によって日本語に訳されていたが、11月のカナダとの親善試合に向けた長崎合宿からミーティングのやり方を変えた。

 英語が苦手な選手にはその場で通訳が同時通訳をしたり、ニールセン監督がコーチと分析の担当者と事前に戦術内容などを詰め、コーチらが日本語で選手たちに説明したりして、時間を短縮しただけでなく、より明確に伝えられるようになったという。

 これにより、選手たちからはより質問が活発に出てくるようになったといい、「非常に価値のある変化だったかなと思います。質問を通して選手の理解度が上がっているのを感じられるようで非常に良かった」と手応えを口にした。

 さらに、就任からここまでの1年をこう振り返る。

「解決策を伝えに来たわけじゃなくて…」ニールセン監督が日本で感じたこと

なでしこジャパン ニルス・ニールセン監督

なでしこジャパンのニルス・ニールセン監督【写真:編集部】

「多くの選手を見ることができて、世界の強豪国とも対戦できたので自分たちの立ち位置が世界で見たときにトップ10に入っていることは確信できました。ここからはアジアカップという初めての主要な大会、本当のチャレンジが始まるなと思っています」

 デンマーク出身の指揮官が日本で1年働いてきて、改めて感じたこともある。

「以前のチームだとヘッドコーチが何でもすべてだった。例えば、キャンプでも最終承認をすることはなかったんですけど、日本では最終的な判断を監督に聞かれたりすることがある。それぞれの国のやり方があると思うので、ルールに関してはそれに従っていこうと思っています」と話し、こう続けた。



「いかに選手には最高の自分自身になってもらうかを考えつつ、自分はフットボールへの理解と異なる文化の適用力を持っていると思うので、わかった振りはせず、少しずつ学びながら取り入れていきたいなと思っています。

 選手もスタッフも共通の何か解決策を見出せることがより成功に近づくかなと思います。解決策を伝えに来たわけじゃなくて、解決策を見つけるためにこのチームに来たと思っているので、スタッフ・選手・JFA(日本サッカー協会)一丸となって必要なことは変えていって、よりよい成功を目指してやっていきたいなと思います」

 自身の指導スタイルに関しては、これまでと比べて具体的な違いは何とも言えないそうだが、日本の持っている良さに触れ、今後の展望を明かした。

「まだどうしてもフットボールの面では足りない面もある」

なでしこジャパン

カナダ女子代表との国際親善試合に勝利し、年内最後の活動を2連勝で締めくくったなでしこジャパン【写真:Getty Images】

「日本は世界一のタレント育成力があるのかなというふうに思います。それは文化的な強みと、そういった素養がサッカーに合っているというコンビネーション(の意味)で。

 ただ、まだどうしてもフットボールの面では足りない面もあるので、そういったところで少しずつ貢献していければ(と思います)。例えばワールドカップ優勝とか、そういうことができればいいかなと思います」

 ここでいうニールセン監督が思うフットボールの足りない面とは、「今年の試合では全試合でたぶんイエローカードは2枚ぐらいかな、非常に少なかった」という日本人特有の礼儀正しさや相手へ敬意を払い過ぎることと、体型や体格の差だという。

「ファウルして止めるとか、ちょっとプレーを遅らせるのがなかったので、そういったところは今後の課題になってくるのかなと思います。あとはサイズの差は明らかにあるんですけど、それは言い訳にはできないと思うので、言い訳にしないようによりタフさを備えていくのが今後より変えていかないといけないところかなと思います」



 実際に直近のヨーロッパ遠征ではフィジカル面で相手にやや遅れをとる場面がみられたほか、カナダ戦では日本がチャンスを多く作るも得点に中々結び付けられなかった印象も受けた。

「どうやってタフに戦うかということが非常に顕著になったのが、この前のヨーロッパ遠征だったかなと思っています。(ゴールを)決めるには非常に強い決意や覚悟を持って、特にペナルティエリア内では戦ってほしいと再度選手に伝えました」

 就任1年で見えてきた収穫と課題を携えて、なでしこジャパンは来年3月にFIFA女子ワールドカップ ブラジル2027への出場権がかかるAFC女子アジアカップオーストラリア2026へ臨むこととなる。

 なでしこジャパンの10大会連続の女子W杯出場はもちろん、その先を見据えた戦い方で内容と結果に引き続きこだわっていくことが重要となる。

(取材・文:竹中愛美)

【著者プロフィール:竹中愛美】
1990年、北海道生まれ。Jリーグ開幕で世の中がサッカーブームに沸いていた幼少期、「入会したらヴェルディ川崎のボールペンがもらえる」の一言に釣られて地元のクラブでサッカーを始める。以降、サッカーの魅力に憑りつかれた日々を送ることに。ローカルテレビ局時代に選抜甲子園や平昌冬季五輪、北海道コンサドーレ札幌などを取材し、2025年よりカンゼンに所属。FWだったからか、この限られた文字数でも爪痕を残したいと目論むも狭いスペースの前に平伏す。ライターとして日々邁進中。

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【了】

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