報道陣の質問に答える佐々木則夫JFA女子委員長【写真:編集部】
佐々木則夫JFA女子委員長は12月18日、東京都内でメディアに向けたブリーフィングを開いた。なでしこジャパン(サッカー日本女子代表)のニルス・ニールセン監督が就任してからの1年を振り返っている。
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佐々木則夫JFA女子委員長がニールセン監督就任からの1年間を振り返る
「今まで築いてきた自分たちのイメージを選手たちはよくわかっているので、あまり何か自分の戦術的なものをこれやれ、あれやれというよりも、君たちが今持っているものを並べてみて、気持ちよくやってというようなところから入って、スムーズに個々が持ってるもの(を出せた中で)、3連勝で初めて優勝した」
佐々木委員長は、ニールセン監督が就任後初めての大会となったシービリーブスカップでの戦い方から総括し始めた。
なでしこジャパンは今年2月のシービリーブスカップで初優勝を飾り、幸先よいスタートを切った。しかし、その後行われたコロンビア、ブラジル、スペイン女子代表との親善試合では4試合白星から遠ざかった。
そして、国内組中心で臨んだ7月の東アジアE-1サッカー選手権では3連覇を逃し、3位に終わる。
10月のヨーロッパ遠征でもイタリア女子代表に引き分け、ノルウェー女子代表には完敗を喫するなど、幸先よくスタートを切った後は中々思うような結果がついてこなかった。
「選手をいろんなポジションでミックスしたりしたら、どういう融合をするのかとか、50人近くいろいろ(メンバーを)回してきて、異常なほどにポジションを変えて、『おい、これ無理だろ』っていうぐらい変えていました。
でも、それもやってみた中で、『こういう化学反応があるんだな』ということも試しながらやっていて、中々結果が出なかった状況がありましたけれども、僕自身もすごく見ていて参考にもなりました」
佐々木委員長は、シービリーブスカップ以降のニールセン監督の指揮について、これまで積み上げてきたベースはもとより、新たな戦力やシステムを積極的に試してきたことを評価した。
一方で、「スタッフのリレーションが上手く機能していなくて、(ニールセン監督は)外国の人なので、伝えるときも時間がかかって、伝え切ったときにはニュアンスやイメージが消えているというときもあった」というコミュニケーションでの課題も浮き彫りになった。
佐々木則夫委員長がニールセン監督に要望したこととは?
カナダ女子代表戦のメンバー発表会見に出席したニルス・ニールセン監督と佐々木則夫女子委員長【写真:編集部】
ニールセン監督もそうした課題を感じていたことから、より良いコミュニケーションをとれるように試行錯誤を繰り返したという。
行きついたのが狩野倫久コーチと事前に戦術内容などを詰めて、ミーティングに臨むということだった。狩野コーチが選手に直接日本語で話すことで、意思疎通にこれまでかかっていた時間を短縮でき、選手の中でもよりイメージが明確になったという。
「選手たちもミーティングじゃなくて個々に話している現状があった。でもチームとしてもっとリレーションができた方が良いということで、そういう方向に変えたら非常にスムーズに(いった)。カナダ戦も上がっていった」
年内最後のカナダ女子代表との2連戦を2連勝で締めくくれたのは、指揮官と選手間でのコミュニケーションの向上もあったと言えるかもしれない。
「結果が出なくて、内容もいまひとつだったところの時間では新たな選手を呼んでいた。個々の選手の確認はできていたのでそんなにナーバスになることなく、そういったものも取り込めていった。次の年が明けた中でもそういうスタイルでやりつつ、結果を出していこうというところです」
就任からニールセン監督と多くの対話を重ねてきた佐々木委員長だが、今後に向けてはこんな要望を提案した。
「日本の選手は非常に相手をリスペクトしている。もっと勝つところから逆算すればマリーシアを伝授するみたいな、記者の方に言ったのかな。私たちはなでしことして、そういうようなことをアプローチするということじゃない。メディアに発信することじゃないというのは伝えて、そうだなというのは確認させたりはしました。
今まで、ほとんど日本人の指導者でなでしこジャパンは常にフェアプレー賞をもらいつつ、優勝しなくてもフェアプレー賞を持ってくる。日本のイズムをちょっと僕も伝えきれていなかったので、いろいろ反省会の中で伝えたりはしています」
なでしこジャパン初の外国人監督として、文化や言語、サッカースタイルなど、多くの違いがあるということを受け入れながら、模索していた1年ともいえるのではないだろうか。
就任1年で見えてきた課題と収穫をベースに、なでしこジャパンは来年3月、FIFA女子ワールドカップ ブラジル2027への出場権がかかるAFC女子アジアカップオーストラリア2026へ臨む。
「もちろん、アジアでやっても優勝をトライしてもらうことに尽きると思います。アンダーの世代のお姉さんたちですから、そういうことをしないと、アンダーの世界でもやっぱり勇気がもらえない」
(取材・文:竹中愛美)
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【了】