2023年限りでサッカー選手としての現役を引退した大津祐樹は、翌24年1月に株式会社コミットの取締役に就任。そこから2年弱の間に同社の年商は約120億円から約300億円に急成長し、今年11月1日付で大津は代表取締役社長に就任した。ビジネスの世界に身を置くなかで大切にする3つの行動がある。今回は、銀座にある株式会社コミットを訪れ、大津に話を訊いた。(取材・文:加藤健一)[1/2ページ]
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代表取締役社長・大津祐樹に訊く
「サッカー選手がビジネスなんて」「知名度を利用しているだけでしょ」。
アスリートがビジネスの世界に踏み出すとき、そんな言葉がセットでついてくることがある。
ロンドン五輪に出場し、元サッカー日本代表FWにもなった大津祐樹も、16年間のプロキャリアを2023年限りで終え、現在はビジネスの世界に身を投じている。
2025年11月1日付で、大津はブランド時計の中古品・新品販売などを行う株式会社コミットの代表取締役社長に就任した。このときも、そんな意見も中にはあった。
実際、12月2日にヤフーに出た記事には500件を超えるコメントがついた。その翌日、大津はXでこのような投稿をしている。
なぜこうなったのか?
インフルエンサーで広告塔で社長になります。とかの会社規模ではありません笑😂
もう少し深掘って説明したいので取材していただける方DMください🙌 https://t.co/eipHQLvglr— 大津祐樹/Yuki Otsu (@yukiotsu23) December 3, 2025
純粋にどのような社長なのかが気になった。サッカー選手としての“大津祐樹”はもちろん知っていたが、ビジネスの世界での彼が知りたくて、気づいたらDMしていた。
「自分で事業をちゃんとしていない経営者だったら、こういう声があがるのは不安だと思います。でも、僕は1から全部説明できますよ。だからあのような投稿をしたんです」
ただ、そういった懐疑の目があることもわかっている。だが、大津はそのような世間の声を、事業を知ってもらうチャンスに変える。
大津はそんな意見を否定するのではなく、それを求めていると言った。
「自分が本当にやってるのかっていう声がありますよね。でも、これは僕が求めている声でもありますね。実際に会って話をしてもらった方にはわかってもらえる。」
注目されていることにも価値がある。注目されていなければ、話題にすら上らないからだ。
「サッカー選手でも注目されればされるほど意見は割れていく。誰も知らない選手に対して意見を言い合うことってないですよね」
時計の販売を手掛けるうえでも、大津はその考え方を大事にしている。
「会社もそうなんです。自分たちに見えている世界観がブランディングになっちゃダメなんです。ブランディングは外の人が決めることで、その意見はちゃんと聞かないといけない。もちろん、自分たちが持っている信念は大事ですが」
元々、知名度に頼った社長だとは思っていなかったが、話を聞けば聞くほど、大津のビジネスマンとしての思考に興味を抱いた。
そもそも大津祐樹は、いつからビジネスに本気なのか。
「セカンドキャリアという言葉は嫌い」
具体的に動いたのは柏レイソルに在籍していた25歳のときで、酒井宏樹と共同でサッカースクールを立ち上げた。横浜F・マリノスでプレーしていた2019年には29歳で株式会社ASSISTを創業。大学生と企業をマッチングする人材事業など、様々な事業にチャレンジしていった。
現役中に会社を興しているので、セカンドキャリアという言葉には矛盾がある。そもそも、セカンドキャリアという考え方に大津は否定的だった。
「セカンドキャリアという言葉は嫌いです。何かが終わって『次に何をやろうか』というのがセカンドキャリアですよね。でも、1つのキャリア(人生)がどう転換していくかだと思うんです」
確かにそうだ。ただ、一昔前よりは減ったかもしれないが、現役のサッカー選手が競技以外のことをやることに否定的な意見も少なくない。
「現役のときはサッカーに100%集中していました」
100%サッカーに集中しながら、ビジネスの世界でも活躍する。一体どういうことだろうか。
「サッカー選手って、サッカーをしている以外の時間がすごくあるんです。もちろん全体練習以外にも身体に費やす時間はありますが、それでも時間はあります。
サッカーに集中していると言っても、マンガ読んだり、動画を見たり、カフェに行ったり、友達とお酒を飲んだり、サッカー以外の時間がゼロなんてことはありません。僕はその時間をビジネスに費やしていたというだけなので、プロとして100%サッカーに集中していたと言い切れますね」
「そのルールだけは定義づけしていました」大津祐樹が大事にする3つの行動
サッカーの「100%」を削るのではなく、それ以外の時間の使い方として「ビジネス」を選んだだけ。
ただ、サッカーとビジネスを両立するうえでは線引きが必要となる。大津は自身にルールを課した。
「サッカーは100%、ビジネスも100%が理想です。それがサッカーが10%、ビジネスが90%になってしまう選手もいた。そのルールだけは自分の中で定義づけしていました。その定義が壊れちゃう人が多すぎるので」
ビジネスの経験はサッカーにもつながる。
「ビジネスを学ぶことでサッカーに生きることもあります。そのルールさえを壊さなければ、サッカー選手としての寿命を延ばすこともできます」
プロに入ったときからサッカーの外にある世界への関心はあった。
「もともと、高校を卒業して大学に行こうと思っていたんです。サッカーを辞めた後もビジネスで成功できるんじゃないかと考えていたんですけど、学校の先生からはプロを勧められた。そのころから意識していましたね」
大津は3つの行動を大切にするようになった。
・学ぶ
・行動する
・継続する
どういう人からも同じ姿勢で学ぶ。自分がどの立場になっても、相手の立場や年齢に関係なく学べることがある。そして、学んだものを行動に移す。そのスピードも意識しながら、それを継続していく。
学び、行動し、継続する。シンプルなこの3つを徹底できることこそが大津の強みである。そして、「俯瞰して見れている人の方が強いです」と話す。
「僕が一番勉強になったのは、酒井宏樹なんです。彼と一緒にいると、彼はどんな状況でも自分をすごく俯瞰して見ているんです。常に謙虚で常に自分のことをフラットに見るというのは、彼から学んだことです」
言うは易し行うは難しと言われる。客観視するために大津は「自分がこう思っているという勝手な像を全部外さないといけない。だから意識しないとできないですね」



