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コラム 24時間前

トッテナム・ホットスパーはなぜ多くの監督から嫌われるのか。強くなる気がない?「ビッグクラブではない」という言葉の意味【コラム】

シリーズ:コラム text by 安洋一郎 photo by Getty Images

トッテナム・ホットスパー
2025/26シーズンのプレミアリーグで残留争いを強いられるトッテナム・ホットスパー【写真:Getty Images】



 トッテナム・ホットスパーは2月11日、トーマス・フランク監督の解任を発表した。だが、指揮官を代えるだけで現状は好転するのだろうか。スパーズの低迷は偶発的なものではない。本稿では、その構造的な要因を考察する。(文:安洋一郎)[2/3ページ]
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リスクを冒したクラブに抜かれた現状

アストン・ヴィラ
リスクを冒したアストン・ヴィラは上位へ。一方のトッテナム・ホットスパーは…【写真:Getty Images】

 スパーズは長年チームの給与総額がプレミアリーグのトップ6に入っていた。しかし、2023/24シーズンと2024/25シーズンは7位へと転落した。

 彼らの代わりに6位へと順位を上げたのがアストン・ヴィラである。

 ウナイ・エメリのチームは給与体系を上げることで、メガクラブへの関心が寄せられる主力選手の残留に務めており、2022/23シーズンからは3季続けてスパーズより上の順位でプレミアリーグをフィニッシュしている。

 今季もこの流れが続くだろう。

 しかし、彼らは商業的に優れたスパーズとの比較では収入がかなり少ない。CLに出場した昨季であっても14位の4億5000万ユーロ(約810億円)であり、スパーズとは2億ユーロ(約360億円)以上の差がある。



 要するに、アストン・ヴィラは「ハイリスク×ハイリターン」を求めてリスクを負っているのだ。実際に彼らの給与総額対収益比率は、昨季のUEFAが定めるSCRの上限80%を大きく超過。和解条項を結ぶ形で処分を受けた。

 イギリス『The Times』によると、上限が70%に引き下げられた今季もSCRに違反する見込みだが、昨夏に大規模な人員整理を行ったことで給与の水準を下げている。

 そのため和解条項に違反はしておらず、罰金のみの処分で済む見込みだそうだ。

 UEFAが定める水準のギリギリを攻めるフロントの経営努力が、近年のアストン・ヴィラがスパーズを上回る成績を残していることに結びついている。

 エメリの手腕はもちろん、成功のために必要なサポートがあってこその現在の結果だ。

天と地の差を招いた“宿敵“とのリスクの差

アーセナル
宿敵アーセナルとの差も歴然だ【写真:Getty Images】

 もう一つハイリスクを負っている代表的なクラブが、スパーズのライバルであるアーセナルである。

 スパーズは、アーセン・ヴェンゲル政権の晩年である2016/17シーズンから6季続けてアーセナルの順位を上回っていたが、2022/23シーズン以降は再びリーグテーブルにおける立場が逆転している。

 近年のアーセナルはミケル・アルテタ監督に全ベットする形でリスクを負った経営をしている。これは近年の給与総額対収益比率を見ると、変化がわかりやすい。

『The Athletic』が昨年9月に公開した記事によると、2023/24シーズンのアーセナルの給与総額対収益比率は52%だったそうだ。

 それが今季は開幕時点で約68%(あくまでも昨年9月時点の数値。その後、何選手の給与が上がった一方で、CLの賞金などは含まれていないので下がる可能性もある)と見込まれていた。



 収益を毎シーズンのように伸ばしている中で、わずか2年で16%も給与の水準を上げているのだ。

 これもアストン・ヴィラと同じく結果を追い求めてリスクを負った結果であり、その成果が「優勝争いのアーセナル」と「残留争いのスパーズ」という天と地のような現状に大きな影響を与えている。

 スパーズも新加入のシャビ・シモンズにクラブ最高給を提示するなど、組織として今季から選手の給与ベースを高めているが、数年前からリスクを負っていた彼らとの差は簡単には縮まらない。

 ポステコグルー前監督はこの差を感じていたことから、5位で終えた2023/24シーズン終了後にペドロ・ネトやブライアン・ムベウモ、マーク・グエイのようなビッグネームの補強を求めたそうだ。

 しかし、実際に獲得した即戦力はドミニク・ソランケのみで、あとは3人のティーンエイジャー(アーチー・グレイ、ルーカス・ベリヴァル、ウィルソン・オドベール)だった。

 オーストラリア人指揮官は若い3選手のポテンシャルを持っていることを認めつつ、「5位のチームを4位、3位へと押し上げるための選手ではない」と言及している。

 この若手選手を積極的に獲得しなければいけない理由も、スパーズが抱えている現状の課題が招いたと言って良い。

アカデミー出身の選手が台頭せず

トッテナム時代のハリー・ケイン
ケインのようなアカデミー出身者が現れない【写真:Getty Images】

 現在バイエルン・ミュンヘンでプレーするハリー・ケインは、スパーズの下部組織出身で、クラブの最多得点記録を更新した象徴のような選手だった。

 しかし、現在のトップチームには彼のようなユース出身の選手がいない。2025/26シーズンにUEFAのリストAに登録されているアカデミー産の選手は、3番手GKのブランドン・オースティンのみだ。

 今季レンジャーズにローン移籍しているFWマイキー・ムーアやCLで2試合に出場したDFジュンアイ・バイフィールドのような有望株もいるが、トップチームでレギュラーを務める実力のある選手は1人もいない。

 これは近年のスパーズのアカデミーがトップチームに戦力を提供できていないことを表している。

 数シーズン前までは、ハリー・ウィンクスやオリヴァー・スキップのような選手もいたが、彼らのような準主力の選手も現在はいない。



 深刻なアカデミー産の戦力不足が露呈しており、その解決策としてのティーンエイジャーの獲得だった。

 2024年夏に獲得したベリヴァルとグレイは、2026/27シーズンのUEFA主催のコンペディションで最大25名の上限があるリストAではなく、21歳以下で2シーズン以上在籍している選手に該当するリストBに入れることが可能となる。

 昨夏のフランク監督の招聘はブレントフォード時代に数多くの若手選手を育成した成果も評価されてのものだった。

 しかし、スパーズのような規模感のクラブで「トップチームの強化」と「10代の若手選手の成長」を同時並行で進めることは難しい。その結果がリーダーシップのある「経験豊富の選手の不足」だ。

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