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コラム 23時間前

「もう何もわからない」セリエAで愚行と誤審が相次ぐ理由。相手を騙す“ずる賢さ”が美化される時代は終わったのでは?【コラム】

シリーズ:コラム text by 佐藤徳和 photo by Getty Images

インテル対ユヴェントス
インテル対ユヴェントスのイタリアダービーでも誤審が起きた【写真:Getty Images】



 セリエAで誤審が相次いでいる。2月14日に行われたインテル対ユヴェントスでは、シミュレーションを行ったアレッサンドロ・バストーニへのファウルを取られ、ピエール・カルルが退場に追い込まれたことで、ユーヴェ側の激しい怒りを買うと同時に、主審とバストーニは猛批判を浴びることになった。VARの誕生でピッチ内の事象がより鮮明になっている中、美徳とされてきた「ずる賢い」プレーは、もう時代遅れなのかもしれない。(文:佐藤徳和)[1/2ページ]
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ユヴェントスの怒りを買ったある判定

 ユヴェントスの怒りは沸点に達した。

 2月14日に開催されたインテルVSユーヴェの“イタリア・ダービー”。前半が終わり、両チームがロッカールームに引き下がる際に騒動は起きた。

 ユヴェントスのフットボール戦略ディレクター、ジョルジョ・キエッリーニは「こんなことは許されない! 世の中にこんなことはあり得ない!」と何度も叫んだ。

 とりわけ激昂していたのはCEOのデイミアン・コモッリである。この試合で主審を務めたフェデリーコ・ラ・ペンナに罵詈雑言を浴びせていた。



 ルチャーノ・スパッレッティ監督がそのコモッリの怒りを鎮めようと抑え込んでいたが、スパッレッティもまた、チーム・マネージャーのマッテオ・ファブリアスとGKマッティーア・ペリンに制止されながら、ラ・ペンナに対して「試合を歪めた!」と発していた。

 その理由は、存在しないインテルDFアレッサンドロ・バストーニへのファウルを取られ、ユーヴェDFピエール・カルルが二枚目の警告で退場処分となったことにある。

 二枚目のイエローカードはビデオ・アシスタント・レフェリー(VAR)の対象外であり、ユーヴェ側の執拗な抗議は受け入れられず、1-1の状況で迎えた42分に一人少ない戦いを強いられることとなった。

 このため、この一戦のハーフタイムは“カオス”と化した。ユーヴェは2-3で敗れ、試合後、スパッレッティと選手たちはメディア対応を拒否した。

「我々がプレーしてきたサッカーは、もはや存在しない」

『Sky Sport』のインタビューに応じたコモッリは、「今日起きたことは恥ずべきことだ。チームにとっても、サポーターにとっても、クラブにとってもだ。これはシーズンを通して起きていることであり、世界中で見られている中で非常に恥ずべきことだ。このような不正義を受け入れるのは非常に難しい」と語り、「受け入れられないし、正しくない」と結んだ。

 審判の判定を巡る問題は、コモッリが述べたように、この1試合に限ったものではない。

 ジェノア指揮官ダニエレ・デ・ロッシは、8日に行われたセリエA第24節のSSCナポリ戦に2-3で敗れた後、疑問を呈していた。

「もう何もわからなくなっている。我々がプレーしてきたサッカーは、もはや存在しない。何が明確なのかわからないし、自分がいったいどんなスポーツを指導しているのかもわからない」

 ジェノアは後半アディショナルタイムにマクスウェル・コルネがエリア内でファウルを取られ、PKを献上。これをラスムス・ホイルンドに決められ、敗れた。



 コルネがアントニオ・ヴェルガーラの足を踏みつけたことでファウルと判定されたが、微妙なジャッジであることは否めない。デ・ロッシの憤りも十分に理解できるものだ。

 ジェノアは1月31日のSSラツィオ戦でも、後半アディショナルタイムにPKで決勝点を許し、2-3で敗北を喫している。こちらはエリア内でのハンドがPKと判定されたものだった。

 そして、大きな議論の的となったのが、9日のユーヴェ VS SSラツィオ戦後のスパッレッティの発言だ。

『DAZN』のインタビューに応じたスパッレッティは、SSラツィオのマリオ・ヒラがフアン・カバルに対して行ったプレーについて、PKの可能性があった場面を次のように分析した。

プロではない主審が、数億円を稼ぐ選手たちを裁くという歪な構造

「主審は自分の解釈で判断し、守備側は軽率な動きをした。しかし私は、それがPKかどうかをここで言うつもりはないし、それほど関心もない。ヒラは走り込んでくる選手、ボールを受け取る可能性のある選手に接触している。したがって軽率な行為だ」

 さらに続ける。

「私は議論を広げたい。今や皆がルールについて抗議している。ルール自体は問題ない。だが、常に“解釈”がある。状況は常に評価され、判断されなければならない。今夜もピッチには23人がいたが、プロでないのは主審だけだ。彼らだけが本当に不安定な立場にある」

 そして最後に、次のように締めくくった。

「私は審判について語りたくはない。けれども、毎週のように何か新しいことが起きる。もしすべての“ステップ・オン・フット(相手の足を踏みつける行為)”がPKであるとみなされるのであれば、今夜のものは間違いなくPKだ」

 スパッレッティの言葉のとおり、実際、審判はプロフェッショナルではない。プロではない主審が、数億円を稼ぐ選手たちを裁くという歪な構造が存在している。



 例えば、インテルVSユーヴェ戦の主審ラ・ペンナは弁護士であり、VARを担当したダニエーレ・ドヴェーリは会社員である。

 全体的にはホワイトカラーの職種に就く者が審判を務めることが多いが、パオロ・シルヴィオ・マッツォレーニは古物商、ファビオ・マレスカは消防士である。すでに審判としてのキャリアを終えたダニエーレ・オルサートは電気技師だ。

 また、セリエAで初の女性主審となったマリーア・ソーレ・フェッリエーリ・カプーティは、労使関係を専門とする研究機関で働いている。

 そして、AIA(イタリア審判協会)の審判任命責任者であるジャンルカ・ロッキは元営業マンで、現役審判を退いた2021年、ローマのニッコロ・クザーノ・オンライン大学で法学の学位を取得した。論文のテーマも審判に関するもので、「VAR、ピッチ上の上訴」というタイトルだった。

 彼らにとって審判はあくまで“副業”であり、試合が終われば“本業”へと頭を切り替えなければならない。ただし、ボランティアとして携わっているわけではなく、試合給は支払われている。

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