
マンチェスター・シティWFCの藤野あおば【写真:Getty Images】
弱冠22歳にして、女子サッカーの世界最高峰リーグのひとつ、イングランドのウィメンズ・スーパーリーグ(WSL)で研鑽を積んでいる選手がいる。マンチェスター・シティWFCで2年目を迎えた藤野あおばだ。強豪での熾烈なポジション争いの中、ここまで12試合に出場し、5ゴール2アシストと結果を残している。海外挑戦時に残した「もっと強く、巧くなりたい」という理想に今どこまで近づけているのか、迫った。(取材・文:竹中愛美)[2/2ページ]
【単独インタビュー/取材日:2月16日】
「1年目は今後サッカーを続けていっても今までで1番の挫折の年になったんじゃないかな」

トッテナム・ホットスパーFCウィメン戦でゴールを決めた藤野あおば(中央左)は長谷川唯(中央右)らチームメイトから祝福される【写真:Getty Images】
「1年目は本当に今後サッカーを続けていっても今までで1番の挫折の年になったんじゃないかなと感じるぐらい、自分的にはかなり難しい時期だった」と明かし、チームメイトの長谷川唯や清水梨紗、山下杏也加ら日本人選手の存在が大きな支えだったという。
中でも長谷川の存在は大きいようだ。
「唯さんは話を聞いてくれたり、私がいろいろ映像を見せに行くと、教えてくれる。練習が終わった後に自分がクロスの練習をしていると、自分に配球して、中にも入っていって、自主練のところも手伝ってくださった。
もう本当に感謝してもしきれないですし、サッカー選手としての唯さんのプレーがすごいのもそうですけど、人としても本当にすごいなと思う部分があります。
難しい時期は、家族とかにもそういう話はしていたので、自分を支えてくれる人がいるから頑張らなきゃ、頑張りたいという気持ちがすごくあった。もちろん、プレーするのは自分ですし、頑張らなきゃいけないのは自分ですけど、自分だけのためにやっているんじゃないというのがすごく大きかったなと思います」
苦しいときに支えてくれた存在が藤野の原動力となったのだろう。
2年目の海外暮らしについては、「海外暮らしも1人暮らしも初めてだったので、ご飯を作ったり、洗濯物をやったり、いつも母がやっていたことがどれぐらい大変だったのかを今、身に染みて感じているところです」と笑いながら話す。
「仕事している感じ。家に帰って、ご飯を作って食べて。すごく作業みたいな感じがしていて。でも、たまに唯さんとか、梨紗さんのおうちにご飯を誘っていただく機会があって、みんなで食べたりとかすると、すごく楽しいなと思うので、もうだいぶ慣れてきましたね」
日テレ・東京ヴェルディベレーザの下部組織で育ち、トップ昇格は叶わなかったが、進学した十文字高校時代に年代別代表に選ばれ、別格の存在感を放った藤野。
2022年に日テレ・ベレーザに加入し、スピードに乗ったドリブルと威力のあるシュートで1年目から主力として活躍し、翌シーズンからWEリーグで2年連続ベストイレブンに選出された。
2024年8月、マンチェスター・シティに移籍する際、「もっと強く、巧くなりたいと思い、決断した」とコメントを残していたが、自身が理想とする姿に今、どのくらい近づいているのだろうか。
「ベレーザのときよりは…」藤野あおばが見つめる現在地

本サイトのインタビューに答える藤野あおば【画像:スクリーンショット】
「移籍する前にワールドカップ(W杯)やオリンピックに出場させてもらって、ベレーザでは本当に環境に恵まれて、試合に出れない機会がほぼなかった中で、得点も決められて、アシストもできていた。
W杯やオリンピックの大舞台では、緊張や気にし過ぎで結果が出せない、自信がないというのがすごく痛感した部分。今の自分から変わりたい、変わらなきゃいけないと思って、海外挑戦を決断した」
当時と比べると、成長した部分も感じているようだが、藤野の中ではまだまだのようだ。
「もっとできるなと思いますし、もっとやらなきゃいけないなと感じるところはプレーしている中でもたくさんある。フィジカルもまだまだ強くなっていけるとか、自分の中でもっとここを伸ばしたいと思う部分がベレーザのときよりも増えたなと感じる。
現在地で言うと、そうですね(笑)。本当にベレーザのときよりは、もうちょっとはマシになったなという感じですかね」
自己評価は厳しめだが、それは自身の足元をしっかりと見つめている証ともいえる。
壁にぶち当たった1年目を経験し、今季はより深めた自信と手応えをシーズン終盤でも持続させるつもりだ。
「このままいって優勝できたらいいなと感じることはありますけど、アジアカップに行くと、アストン・ヴィラ(WFC)とトッテナム(・ホットスパーFCウィメン)との2試合を欠場する形になります。まだまだ、マンチェスター・ユナイテッド(WFC)とか、難しい試合が残っていると思う。
そういう相手のレベルに関わらず、ある試合は全部、勝利で収めていけるようなところはチーム全体であると思うので、自分はもっと得点の機会やアシストのところで結果を残していきたいなと思っています」
厳しい競争の中でもがき、成長し続ける22歳は、満足という言葉を知らないのかもしれない。「夢は不満足から生まれる。満ち足りた人間は夢を見ない」というフランスの作家が残した言葉があるが、藤野にはこの先どこまでも探求し続けて、高みを目指していってほしい。
いつか、「もっと強く、巧くなった」藤野に出会えるまで、その成長を見届けたいと思う。
(取材・文:竹中愛美)
【著者プロフィール:竹中愛美】
1990年、北海道生まれ。Jリーグ開幕で世の中がサッカーブームに沸いていた幼少期、「入会したらヴェルディ川崎のボールペンがもらえる」の一言に釣られて地元のクラブでサッカーを始める。以降、サッカーの魅力に憑りつかれた日々を送ることに。ローカルテレビ局時代に選抜甲子園や平昌冬季五輪、北海道コンサドーレ札幌などを取材し、2025年よりカンゼンに所属。FWだったからか、この限られた文字数でも爪痕を残したいと目論むも狭いスペースの前に平伏す。ライターとして日々邁進中。
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