なでしこジャパンの藤野あおば【写真:Getty Images】
FIFA女子ワールドカップ日本人史上最年少ゴール、なでしこジャパン(サッカー日本女子代表)のオリンピック最年少ゴールと、記憶に残るゴールを決めてきた藤野あおば。決定力の高さをみせてきた印象もあるが、本人の中では理想と現実に乖離があった。まもなく迎えるAFC女子アジアカップ2026、その先のW杯で22歳のアタッカーが見据えるものとは。(取材・文:竹中愛美)[1/2ページ]
【単独インタビュー/取材日:2月16日】
藤野あおばがなでしこジャパンでの活動に感じていたギャップ

2022年になでしこジャパンに初選出されて以降、主力に定着した藤野あおば【写真:Getty Images】
なでしこジャパンデビューは、藤野あおばが18歳のときだった。
それからおよそ3年半が経ち、国際Aマッチ出場は36試合。ここまで9ゴールを挙げ、いまや代表の主力として定着し、攻撃に欠かせない選手になった。
藤野は代表でのここまでの歩みをこう振り返る。
「U-20のW杯を終えてから、すごく嬉しいことに代表合宿に呼んでもらえて、自分の感覚的には思っていたより、代表に招集していただける機会が早かった。
U-20でできなかったことをもっと向上させて、代表の試合で自分がやらなければいけないことをやってみたいなと、すごく忙しかったのはあります。代表の中で自分の色を出せてきたのは本当に最近だなと自分的には思っています。
もちろん、試合に出させてもらう機会が今かなり多いと思いますが、その中で自分ができていること、チームに与えられている良い影響が見合っていないなと自分的には思っているので、もっと頑張らなきゃいけない、足りていないなと感じるところですね」
華々しいキャリアで連想していたのは、順風満帆というイメージだったが、藤野の中には葛藤があった。
「代表に入ってから初ゴールを決めるまで、かなり試合数があったり、若いながら代表に呼んでもらえて、自分が持っているものを自分がやりたいだけやるのが許される年齢ではあったと思うんですけど、それを最大限に発揮できていない」とデビュー時は難しさを感じていたようだ。
試合に出場しているのに得点ができない。周りからも焦らされる感覚があった。得点が遠いことを気にしてもいた。
「全然みんな覚えていないと思うんですけど」忘れられない記憶が藤野あおばを突き動かす

藤野あおばは2023年のW杯グループステージ2戦目のコスタリカ戦で男女を通じて日本人史上最年少ゴールを奪った【写真:Getty Images】
「試合に出ているからには試合に出られていない選手たちに見せなきゃいけない、結果で圧倒しなきゃいけない。そういう部分で、“結果を出せていないけど試合に出ている。この人じゃなくて自分でいいのかな”と、ちょっと感じているところがあった。
代表に入っても、葛藤としてある部分でもありましたし、その中でW杯とか、オリンピックとか、大きな大会がどんどん近づいてくるのがありがたいことではありますけど、“まだ準備できていないのに”みたいな感覚がずっとあったなという感じですかね」
代表デビューからおよそ9か月、10戦目で初ゴールを手にした藤野だが、パリオリンピックの出場権がかかったアジア最終予選の北朝鮮戦で決勝ゴールを決めるなど、大事な場面での決定力があることを忘れてはならない。
だが、ここでもまた、藤野にとっては苦い記憶がある。前回2023年のW杯グループステージ2戦目のコスタリカ戦で男女を通じて日本人史上最年少ゴールを奪った前のことだ。
「全然みんな覚えていないと思うんですけど、自分的には初戦のザンビア戦で“これは確実に決められたであろう”瞬間があって、後半、背後に抜け出して、キーパーとほぼ1対1 みたいな状況で、普通に外しちゃったんです。
自分的にはもちろん、絶対に決めたかったシーンですけど、やっぱり自分ってこういう大事なシーンで外しちゃうんだなって、自分に落胆した瞬間だった。そういう小さいシチュエーションの中で、それができるようになるために練習していたのに。そういうのが自分に満足できない、もっと頑張らなきゃいけないと感じるところです」
藤野が度々口にしている「満足できない」という言葉は、こうした自身の中で納得できないプレーが積み重なって生まれているのかもしれない。
なでしこジャパンは昨年、初めての外国人指揮官、ニルス・ニールセン監督を迎え、就任から1年が過ぎた。
ニルス・ニールセン監督になって、強豪国と対戦する中で感じたこと

昨年6月のスペイン女子代表戦でプレーする藤野あおば【写真:Getty Images】
「戦術どうこうよりは外国人ということもあって、マインドの部分で試合前は『勇敢に』とか、そういう部分がすごく増えて、面白いなと感じていますけど、試合の部分で勝利への執着心と言いますか。そこにすごく熱量を持って指導してくださる方」と指揮官の印象を語り、こう続けた。
「(前任の池田)太さんのときにあったものに上乗せして、サッカーのシビアな部分を選手同士でも求め合える関係性、チームになったところは個人的に感じている。
ニルスさんになられたことで強豪とプレーできる機会が増えて、結果が若干遠のいていたが、前回日本でやったカナダとの試合でしっかり結果を残せたのは、ちょっとずつチームが前進できている証でもあったと思う。それをこれからも継続しつつ、よりもっと大きなものにしていけたらいいなと感じています」
ニールセン監督の初陣となったShe Believes Cup(シービリーブスカップ)では優勝し、幸先よくスタートを切ったが、その後のブラジルやスペイン女子代表との親善試合では、白星から遠ざかった。
強豪国との対戦の中で感じた差について、藤野はこのように分析する。
「強豪は勝つためのサッカーができているチームだと感じる。日本はパスサッカーやビルドアップが魅力的で、選手が献身的に走って、守備も体を張ってみたいな、見ていて面白い、綺麗な、日本人のひたむきな感じが伝わってくるものはあると思います」と前置きしたうえで、持論を展開した。
「でも、それは勝てるサッカーに直結するものじゃないなと正直、少しだけ感じているところ。日本が攻撃になった瞬間、ユニフォームを引っ張って止めたりする。もちろん、見ている人からしたら汚いな、ずるいなと思うところだと思いますけど、それはサッカーで勝つためには絶対に必要な部分だと思います。
そういうずる賢さが若干、自分たちには足りないのかなと感じる。日本がこれからもっと世界大会で結果を残していけるようになるためには、そういう部分もやっていかなきゃいけない。でも、それは教えてもらうものじゃなくて、やられて、経験して、“これを自分たちもやらなきゃいけないんだ”となっていくところだと思う」
ニールセン監督の意向もあり、強豪とのマッチメイクが増えたことで、より浮き彫りとなったといえるかもしれない。世界を相手にしたとき、勝利への細部のこだわりは重要になる。