
インタビューに応じるFC町田ゼルビアFDの原靖【写真:編集部】
大分トリニータ、清水エスパルス、ファジアーノ岡山、FC町田ゼルビアと、原靖は人の縁に導かれるように異なる4つのクラブで強化担当を歴任。20年以上、個性豊かな経営者や監督の間に立ち、クラブの浮沈にかかわる重要なかじ取り役を担ってきた。そんな原のキャリアを、全3回に渡る連載で振り返っていく。(取材・文:元川悦子)※本文敬称略[2/2ページ]
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強化担当は「自分1人ではできないんですよ」

FC町田ゼルビアの昌子源、中山雄太、相馬勇紀【写真:Getty Images】
そういう中で重視したのは、それ相応の戦力を揃えること。町田は2023~25年の3年間で毎年のように半数以上の選手を入れ替えるという大胆なアクションを起こしている。それは異例の編成だったと言っていい。
「既存選手と契約交渉を進め、満了を伝え、移籍先を探す作業も含めて、本当に強化スタッフは頑張ってくれたと思います」と原はまずスタッフに感謝した。
そのうえで、カリスマ社長である藤田氏の力量を改めて強調したのだ。
「新戦力の獲得は巨額のお金が必要になります。昌子源、中山雄太、相馬勇紀といった日本代表経験者や岡村大八、前寛之ら他クラブで主力だった選手を取るのは本当にハードルが高いことなんです。
昨今は日本人選手の欧州移籍の可能性が広がり、有望な選手を他クラブから取ろうとしても一筋縄ではいかない。僕は『ぜひ来てほしい』『力を貸してほしい』とストレートにお願いしましたし、『一緒にアジアで上位を目指したい』『日本代表がズラリと揃うようなクラブにしたい』というビジョンを伝えて、本人たちの理解を取り付けました。
もちろん資金を投じてくれた藤田さんの力がなければ叶わない移籍ばかりでした。我々はもう少し若い世代のトップ選手を集めたかった。となれば、かかるお金の額も一気に上がります。
それを投じてくれるオーナーや社長の判断があってこそ、僕の仕事も成り立つ。選手や監督の頑張りも大きいですし、チームを強くする仕事は絶対に自分1人ではできないんですよ」と彼はしみじみと言う。
「組織で勝てるようにならないといけない」

FC町田ゼルビアのスタッフ陣【写真:Getty Images】
長い道のりを歩み続けて今、Jリーグ屈指の強豪クラブの強化トップとして手腕を振るう立場になった原。ここから見据えるのは、町田のJリーグ制覇、そしてアジア制覇という大目標である。
「そのためには組織力を高めていくべきだと思います。今、町田には強化担当が6人いて、フットボールアドバイザーの徳さんもいるんですが、ここまでの大所帯は4チームで働いてきて初めて。大分時代は自分と吉岡(宗重)君、スカウトの片野坂(知宏)さんの3人体制。清水と岡山も4人でしたからね。
強化の仕事もチーム編成や契約、スカウト、テクノロジーを使った情報収集など多岐にわたります。現場を見てもフィジカルコーチやGKコーチだけじゃなくて、戦術担当、セットプレー担当、フィジオセラピスト、アスレティックトレーナーなど役割が細分化され、選手よりスタッフの方が多いという状況になっています。
そういう環境ですから、組織で勝てるようにならないといけない。自分が30代の頃、徳さんたちにノウハウを事細かく教えてもらって、何とか一本立ちできたように、若いスタッフにもいろんな経験をしてもらい、能力を引き上げてもらうことも重要だと思います」
関わった人々をリスペクトし続けて、長きにわたって強化の仕事に携わってきた原も50代後半。Jリーグの“重鎮”の領域に差し掛かりつつある。だからこそ、町田の人材を育てつつ、自分自身もこれまでの経験値をより生かせるような環境を作れれば理想的。それが強い町田にもつながっていく。そういう明るい未来に向かっていけるように、彼はまだまだ足を止める気はない。これまで以上にアグレッシブさを前面に押し出して、チームのために全力で働き続けていく覚悟だ。
【著者プロフィール:元川悦子】
1967年、長野県生まれ。94年からサッカー取材に携わり、ワールドカップは94年アメリカ大会から2022年カタール大会まで8回連続で現地に赴いた。「足で稼ぐ取材」がモットーで、日本代表は練習からコンスタントに追っている。著書に『U-22』(小学館)、『黄金世代』(スキージャーナル)、「いじらない育て方 親とコーチが語る遠藤保仁」(NHK出版)、『僕らがサッカーボーイズだった頃』シリーズ(カンゼン)などがある。
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