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コラム 21時間前

“イタリアのファーガソン”を知っているか? なんと同一クラブで44年も指導。今や珍しい長期政権を可能にした理由【コラム】

シリーズ:コラム text by 佐藤徳和 photo by Getty Images

ルイージ・フレスコ
ヴィルトゥス・ヴェローナを44年に渡り率いたルイージ・フレスコ【写真:Getty Images】



 日本ではあまり馴染みがないが、ヴィルトゥス・ヴェローナというイタリア3部クラブが話題を呼んだ。その理由は、ルイージ・フレスコ監督の退任。なんと彼は、44年にも渡り、このクラブを率いてきたのである。そうした背景から“イタリアのファーガソン”とも呼ばれているが、なぜここまでの長期政権を築くことができたのか。そして、フレスコとはどんな人物なのか。(文:佐藤徳和)[2/2ページ]

「私のチームを降格させないためなら…」

「どんな監督でも解任されていた状況だと思う。最近は本当に苦しんでいる。勝点21で下から3番目。何かしらの刺激が必要だ。今季は不運なシーズンだが、この交代が残留につながることを願っている。

 ヴィルトゥスへの愛はどんな記録にも勝る。私のチームを降格させないためなら、パレルモまで歩いてでも行く。これが愛する者の言葉でなければ何であろうか」

 それでは、40年も“ワンクラブ”を指揮することができた理由は一体なんであったのだろうか。

「一つは、正しい人々に囲まれてきたことだ。クラブ運営は決して一人ではなかった。CEO(代表取締役)もいれば、多くの人がクラブのために働いている。ただ私は、ユースチームからトップチームまで、どのトレーニングも一度も見逃さなかった。



 秘訣は、常に変わらぬ、限りない意欲だと思う。そしてずっと自分たちを信じ続けてきたこと。ゼロから出発し、言わば砂の上に築いたようなものだ。少しの健全な狂気とともに」

“監督フレスコ”を辞することとなったが、“会長フレスコ”として、これからも、クラブを見守っていく。ベンチからの指揮を退き、これからはアドバイザー的な役割を担い、クラブの発展に寄与していくことを明言している。

 後任を任されたのは、46歳のトンマーゾ・キエッキ。これまで助監督としてフレスコを支えてきた人物だ。

 ヴェローナ郊外のゼヴィオの生まれで、1996年にキエーヴォでキャリアをスタートしている。これまでに2チームを指揮しているが、プロチームを指導するのは、これが初めてである。

監督に戻ることは?「それができないと決まったわけでは…」

 フレスコは、後継者についてこう語っている。

「優秀で有能で、情熱的な監督だ。最近の試合ではすでに彼に指揮を任せていた。準備はできている。結果が彼の価値を証明してくれることを願っている。

 彼は私より20歳若い。私が少し失ってしまったエネルギーを持っている。(ユルゲン・)クロップも言っている。『私たちは永遠ではない。時には離れることが必要だ』と。私にも同じことが言える」

 かつては、「50年指揮を取りたい」と意欲を見せていたフレスコ。これで、監督業にはピリオドを打ち、会長職に本腰を入れることになるのだろうか。



「それができないと決まったわけではない。それに50年“連続”で指揮するとは言っていない。いつだって戻る時間はある。7月にはまた監督としてベンチに戻っているかもしれない。人生では“絶対にない”とは言えないものだ」

 フレスコはまだ64歳。連続して一つのクラブを50年指揮するという金字塔は途絶えてしまったが、本人が言うように再び監督として返り咲くチャンスは十分にあるはずだ。

 だが、仮にそのような機会が訪れなかったとしても、フレスコは一つのクラブに情熱を捧げることがいかに素晴らしく、またチームの強化が可能であることを、自らの実績で証明してみせた。

 フレスコの功績は、強く称えられるべきものである。

(文:佐藤徳和)

【著者プロフィール:佐藤徳和】
1998年にローマでの語学留学中に、地元のアマチュアクラブ「ロムーレア」の練習に参加。帰国後、『ポケットプログレッシブ伊和・和伊辞典』(小学館)の制作に参加し、イタリア語学習書などの編集、校正、執筆に携わる。2007年から、フリーランスとして活動し、主にイタリア・サッカー記事のライティングに従事。2014年には、FC東京でイタリア人臨時GKコーチの通訳を務める。IL ROMANISTA、日本特派員。『使えるイタリア語単語3700』(ベレ出版)、『イタリア語基本の500単語』(語研)を共同執筆。日伊協会では、カルチョの記事を読む講座を開講中。X:@noricazuccuru

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【了】

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