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コラム 7時間前

アーセナルに黄金期はやって来るのか。マンCやリヴァプールのように…。強力なスカッドを維持するために必要なこと【コラム】

シリーズ:コラム text by 安洋一郎 フリーライター photo by Getty Images

アーセナル
【写真:Getty Images】



 2025/26シーズンのプレミアリーグはアーセナルの優勝で幕を閉じた。実に22年ぶりのリーグ優勝。ミケル・アルテタ体制で築き上げた堅守やセットプレーを武器に安定して勝ち点を積み重ねた。黄金期到来の予感もするが、リヴァプールやマンチェスター・シティのようになるには、まだ足りない部分も多い。重要なのは、今後の移籍市場における考え方だ。(文:安洋一郎)[2/2ページ]

エドゥの退任とアンドレア・ベルタの到来

 昨季のアーセナルで大きな変化となったのが、2024年11月にスポーツ・ディレクター(SD)のエドゥが退任したことだ。

 アルテタと二人三脚で再建を進めてきた人物の離脱は、不安材料にも映った。

 しかし、暫定SDを務めたジェイソン・アイトを経て、昨年3月30日にアトレティコ・マドリードのアンドレア・ベルタが就任すると、その不安は一変する。

 結果的に、この強制的な交代は功を奏した。

 昨年4月に執筆した「「世界で3本の指に入る」アーセナルの“新SD”アンドレア・ベルタとは何者? 招聘の理由と求められる役割とは【コラム】』で触れた通り、ベルタはその手腕を遺憾なく発揮した。

 就任直後のベルタに求められたのは、単なる補強ではない。アルテタの理想を、1シーズン戦い抜けるスカッドへ変えることだった。

 退団したトーマス・パーティの後釜としてマルティン・スビメンディ(←レアル・ソシエダ)を獲得。

 さらに、チームに不足していた“9番タイプ”としてヴィクトル・ギェケレシュ(←スポルティングCP)、創造性をもたらすエベレチ・エゼ(←クリスタル・パレス)、負担が大きいブカヨ・サカの代役になれるノニ・マドゥエケ(←チェルシー)を加えた。

 そして鉄板のCBコンビであるガブリエウ・マガリャンイスとウィリアン・サリバのバックアッパーとしてクリスティアン・モスケラ(←バレンシア)とピエロ・インカピエ(←レヴァークーゼン)らの獲得も非常に大きな役割を果たした。

 総勢8人にも及ぶ補強によって、アーセナルはかつてないほど分厚いスカッドを手に入れた。

 この補強こそが、今季の優勝を決定づけた最大の要因だったと言っても過言ではない。


怪我人が出ても崩れなかったアーセナル

 昨年12月には、ガブリエウとサリバの両CBが同時離脱する非常事態に見舞われた。

 それでも、既存戦力のユリエン・ティンバーに加え、新加入のモスケラとインカピエが見事に穴を埋めた。

 以前のアーセナルであれば、どちらか一方の離脱だけでもチームパフォーマンスは大きく低下していた。しかし今季は、大きなマイナスを出さずに乗り切っている。

 ギョケレシュとカイ・ハヴァーツが離脱した昨年11月はミケル・メリーノが最前線のポジションを補い、怪我が多かった左SBのリッカルド・カラフィオーリの代役としてもインカピエは優秀だった。

 また新加入のスビメンディは怪我や疲労の影響もあり、4月以降にパフォーマンスレベルが低下したが、その穴をマイルズ・ルイス=スケリーがカバーした。
  
 今季のアーセナルは、“第一の矢”が折れても、“第二の矢”が飛んできた。
 
 これがアルテタの理想とする完成度の高いスカッドを、1シーズンを通してほぼ維持できた要因である。


黄金期を築くために必要なこと

 近年のアーセナルは、リスクを伴う大型補強を続けてきた。

 プレミアリーグ以上に厳格なUEFAの財務規定を踏まえれば、昨夏の8人補強は一種の賭けでもあった。

 だが、質の高いスカッドを揃えたことが、プレミアリーグ制覇とCL決勝進出の両立につながった。勝ち進んだことで多額の賞金も獲得し、その投資は大きなリターンとなって返ってきた。

 この圧倒的な「チームとしての体力」は、編成陣の尽力の賜物だ。

 そして、今季の成功に最も欠かせなかった人物こそ、就任直後から手腕を発揮したベルタだったのかもしれない。

 もっとも、問題はこの巨大なスカッドを今後も維持できるかどうかだ。それもまた、ベルタの手腕にかかっている。

 アーセナルは決して「高値で選手を売る」ことが得意なクラブではない。

 移籍金のインフレが進む現在においても、クラブ史上最高額の売却額は2017/18シーズンのアレックス・オックスレイド=チェンバレン(→リヴァプール)の3800万ユーロ(約70.3億円)である。

 また、2019年12月に発足したアルテタ体制における総売却額は約2億6100万ユーロ(約482億円)に留まっている。

 クロップとグアルディオラの時代が長く続いた理由は、持続可能なチーム作りを実現していたからだ。

 クロップ体制のリヴァプールは、2015年10月〜2024年6月までに約6億9400万ユーロ(約1283億円)、グアルディオラ体制のマンチェスター・シティは2016年7月以降で約12億7900万ユーロ(約2366億円)もの売却益を生み出している。

 アルテタは両者より在任期間が短いとはいえ、売却額は極端に少ない。

 軸となる選手を維持しつつ、売り時の選手は迷わず売却してスカッドのサイクルを回すこと。これが長期的に強いチームを維持するための重要な条件であることは、成功した2人の実績が証明している。

 昨夏のアーセナルは補強面では成功した一方で、選手売却による収入は1388万ユーロ(約25.7億円)にとどまった。今夏以降は、「獲得」だけでなく「放出」の改善も求められる。

 それもまた、監督を支えるフロントの仕事だ。

 アーセナルはようやく強い11人ではなく、強いスカッドを手に入れた。

 もしベルタ主導のサイクルが機能し続ければ、今回の優勝は22年ぶりの”復活”ではなく、新たな”黄金期の始まり”として記憶されるのかもしれない。

(文:安洋一郎)

【著者プロフィール:安洋一郎】
1998年生まれ、東京都出身。高校2年生の頃から『MILKサッカーアカデミー』の佐藤祐一が運営する『株式会社Lifepicture』で、サッカーのデータ分析や記事制作に従事。大学卒業と同時に独立してフリーランスのライターとして活動する。現在は『フットボールチャンネル』をはじめ複数のwebメディアや欧州名鑑などに寄稿。12歳からアストン・ヴィラを応援し、プレミアリーグを中心に海外サッカー全般を追っている。Xアカウント:@yoichiro_yasu

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【了】

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