2006年にバロンドールを獲得した最後のDFファビオ・カンナヴァーロが率いるウズベキスタン代表が、ついにワールドカップの舞台へ立つ。1998年大会から挑戦を続けながら届かなかった悲願を、8度目の予選挑戦で実現。国を挙げた育成改革によって急成長を遂げた“ホワイト・ウルブズ”は、初の世界舞台でどのような足跡を残すのか。世界王者の知見を携えた新指揮官とともに挑む歴史的な戦いを追う。(文:佐藤徳和)[2/2ページ]
歴代最多得点者ショムロドフとマンC戦士フサノフ
経験不足が指摘されるウズベキスタン代表だが、個々では世界で戦ってきた選手を擁す。このチームのキャプテンを務めるエルドル・ショムロドフは、ウズベキスタン代表の歴代最多得点記録保持者だ。
これまでに44得点をマークし、すでに現役を引退した2位マクシム・シャツキフの34得点を10得点も上回る。6月29日に31歳の誕生日を迎えるボンバーは、1メートル90の恵まれた体躯を誇りながら、ワイドに動き機動力も備える。
ASローマを中心にイタリアで戦術を深め、25/26シーズンは、ローマからトルコのイスタンブール・バシャクシェヒルにレンタル移籍。22得点を奪い、ナイジェリア代表でトラブゾンスポル・クラブに所属するポール・オヌアチュと並んでリーグ得点王に輝いている。
ウズベキスタンの点取り屋が、ゴールを奪えば、チームは一気に勢いづくはずだ。
そして、そのショムロドフ以上に期待を集めているのが、アブドゥコディル・フサノフだ。22歳のセンターバックは2025年1月、フランスのRCランスからマンチェスター・シティへ移籍し、プレミアリーグ史上初のウズベキスタン人選手となった。
契約期間は4年半。移籍金は3360万ポンドに出来高払いのボーナスが加わる大型契約で、クラブの期待の大きさがうかがえる。
加入初年度はプレミアリーグで6試合の出場にとどまったものの、2年目の25/26シーズンは足首の負傷に悩まされながらも21試合に出場し、着実にプレー機会を増やしている。世界屈指のセンターバックとして名を刻んだカンナヴァーロの監督就任は、フサノフにとっても大きな追い風となるだろう。
守備者として学べることは数多いはずだ。3バックの中央に構える若きDFの出来が、ウズベキスタンの命運を大きく左右することになりそうだ。
名選手、名将となれるか
イタリアの英雄、カンナヴァーロは続ける。
「ウズベキスタンは成長を続ける国だ。首都タシュケントには非常に近代的なスポーツセンターがある。イスラム教国だから、試合前やさらにはハーフタイムにも選手たちが礼拝することもある。別室に行って祈り、その後後半戦に戻ってくる。問題ではない。時間の管理をすればいいだけだから」
文化の違いについても、カンナヴァーロは意に介していない。52歳のイタリア人指揮官は2014年11月、中国スーパーリーグの広州恒大で監督キャリアをスタートさせて以来、様々な国で指導経験を積んできた。
サウジアラビアのアル・ナスルを経て中国・甲級リーグの天津権健の監督に就任。広州恒大の監督に再就任し、中国代表の指揮官も兼任したが、2試合のみの指揮で、辞任している。
その後、セリエBのベネヴェント・カルチョを率いたが、途中解任の憂き目にあった。指導者の道を歩み始めて約10年の2024年4月には、セリエAで降格圏の17位に沈むウディネーゼの監督に任命され、残留のミッションを成し遂げたが、契約延長はなされなかった。
その年の12月にはクロアチアのディナモ・ザグレブの指揮官に就任したが、2025年4月に解任。そうした紆余曲折を経て、現在はウズベキスタン代表を率いている。
選手としての実績は申し分ない一方、指導者としての評価には疑問符が付く。ウズベキスタン代表就任後、公式戦を戦っておらず、これまでに率いたのは7試合のテストマッチのみ。
成績は2勝2分け3敗(PK戦勝利は引き分け扱い)となっている。エジプト代表とガボン代表から勝利を挙げた一方、イラン代表とベネズエラ代表にはPK戦の末に勝利しているが、90分ではスコアレスドローに終わっている。
昨年10月のウルグアイ代表戦では1-2で敗戦。さらに、W杯開幕直前の6月に行われたカナダ代表戦とオランダ代表戦も、それぞれ0-2、1-2で黒星を喫した。
とりわけカナダ戦とオランダ戦では、試合を通じて主導権を握られる時間帯が長く、内容面でも課題を残した。
『失うものは何もない』初のW杯で示すもの
そして、本大会、ウズベキスタン代表は、18日にコロンビア代表とのグループステージ第1戦を迎える。ウズベクの民にとって、初めて世界からの注目を浴びる歴史的な一戦である。
第2戦は24日のポルトガル代表戦。クリスティアーノ・ロナウドを擁する優勝候補の一角との対戦だ。
そして、コンゴ民主共和国とのグループステージ最終節。FIFAランキング(6月13日発表)で50位のウズベキスタンを上回る、46位に位置する相手であるが、勝利を手繰り寄せなければならない相手である。
現実的な目標は、コンゴ民主共和国との勝ち点3獲得だろう。そしてコロンビア、ポルトガルという強豪との戦いで、どれだけ抗い、世界にインパクトを残せるか。
それが、初のW杯に挑むウズベキスタンに課されたミッションではないか。
「ポルトガルの中盤を見たら、2秒で動画を消したくなる。コロンビアを見ても10秒だ」とカンナヴァーロも2つのサッカー強国に脱帽する。それでも、諦めたわけではない。「我々の強さはハングリー精神。我々は前に進むだけ。失うものは何もない。真っ向から勝負する」
1メートル75と現代のセンターバックでは極めて小柄ながら、世界の屈強なストライカーと対峙し、最も権威のある個人賞、バロンドールを受賞した最後のDFによって率いられるウズベキスタン代表。世界王者の知見を得た彼らが、初めて挑むW杯でどのような足跡を残すのか。
その戦いに注目が集まる。
(文:佐藤徳和)
【著者プロフィール:佐藤徳和】
1998年にローマでの語学留学中に、地元のアマチュアクラブ「ロムーレア」の練習に参加。帰国後、『ポケットプログレッシブ伊和・和伊辞典』(小学館)の制作に参加し、イタリア語学習書などの編集、校正、執筆に携わる。2007年から、フリーランスとして活動し、主にイタリア・サッカー記事のライティングに従事。2014年には、FC東京でイタリア人臨時GKコーチの通訳を務める。IL ROMANISTA、日本特派員。『使えるイタリア語単語3700』(ベレ出版)、『イタリア語基本の500単語』(語研)を共同執筆。日伊協会では、カルチョの記事を読む講座を開講中。X:@noricazuccuru
【関連記事】
【W杯写真ギャラリー】美女サポーター一覧
【グループリーグ最新順位表】FIFAワールドカップ2026
【全試合日程・放送予定の一覧】FIFAワールドカップ2026
【了】

