
W杯で観戦する姿を目撃されたラッパーのドレイク【写真:Getty Images】
ポルトガル代表対クロアチア代表の客席には世界的な知名度を誇るラッパー、ドレイクの姿があった。アメリカ合衆国代表の初戦にはトム・クルーズをはじめ各界のセレブがおり、韓国対チェコではaespaのカリナとウィンターが声援を送っていた。北中米W杯ではスタジアム内外で「セレブの視線」が注目を集めているが、彼らの存在は、単なる話題作りを超えてスポーツビジネスの現場で実質的な役割を果たし始めている。
劇的な変化をもたらした例も
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ドレイク、デイヴィッド・ベッカム、ジョージ・ルーカス、aespaの2人がスタンドに映るだけでSNS上の関心を集め、サッカーに元々関心の薄い層まで巻き込む。
さらに近年は観戦にとどまらず、セレブ自身がクラブ経営に踏み込む例が増えている。ドレイクは2024年、財政破綻寸前だったセリエA(当時)のヴェネツィアに対し、共同オーナーの依頼を受けてわずか2週間で3000万ユーロ(約54億円)規模の投資を集め、未払い給与を清算してクラブを救済した。
以降ヴェネツィアは同氏のブランド「NOCTA」との協業も進め、単なる支援者を超えた関係を築いている。
近年のサッカーとセレブの関係として、象徴的なのが“共同オーナー”、ライアン・レイノルズの登場だろう。
この事例は、2020年後半に浮上した買収の噂から始まった。当時のレクサムAFCはイングランド5部リーグに所属する無名クラブで、世界最古のプロサッカークラブのひとつという由緒ある歴史を持ちながら、その存在は地元ウェールズ北部を出ることはほとんどなかった。
レイノルズと盟友の俳優ロブ・マケルヘニーが買収に興味を示したというニュースは、ウェールズの情報サイト『Wales.com』によれば、当初クラブOBの選手でさえ冗談だと思ったと振り返るほど現実味のない話として受け止められていた。
しかし2人は入念な下調べの末、少額投資でクラブをかつての栄光へ引き戻せると判断する。
買収後の変化は劇的だった。チケットは記録的な売り上げを叩き出し、TikTokとのユニフォームスポンサー契約を締結。さらにEA SportsのFIFAシリーズにも史上初の5部クラブとして収録されるなど、露出は一気に世界規模へと広がった。
レイノルズ自身のインスタグラムフォロワー当時4,100万人(現在4,900万人以上)という発信力を背景に、2人は自ら試合に足を運び、地元企業の広告に出演するなどコミュニティとの距離を縮める活動も続けた。
ドレイクとレイノルズに共通するのは、著名人の発信力と資金調達力が、クラブという事業体の存続や成長そのものを左右する経営資源になっている点だ。もはやセレブは観客席で存在感を放つだけではなく、スポーツビジネスの重要なステークホルダーになりつつある。
彼ら・彼女らをいかにして巻き込むかという観点では、今回の北中米W杯は多くのヒントがありそうだ。3か国にまたがる熱狂が、第2・第3のレイノルズおよびドレイクの誕生に繋がるかもしれない。
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