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スペイン代表は、なぜ“個最強”のフランス代表を圧倒できたのか?明暗を分けた理由を考察【北中米W杯コラム】

シリーズ:コラム text by 高橋大地 photo by Getty Images
スペイン代表
決勝進出を果たしたスペイン代表【写真:Getty Images】



 FIFAワールドカップ2026(北中米W杯)準決勝、ファンの間では“事実上の決勝戦”といわれたフランス代表対スペイン代表の一戦は2-0でスペイン代表が勝利した。世界最高峰の個を揃えたはずのフランスが、ほとんど自分たちの時間を作れず、スペインに主導権を握られ完敗を喫した。なぜ、“個最強”とも言えるチームがここまで圧倒されたのか。その要因を探る。(文:高橋大地)[2/2ページ]

フランスに必要だったのは「個」ではなく明確な守備設計

フランス代表キリアン・エムバペ
フランス代表キリアン・エムバペ【写真:Getty Images】


 一方、フランスの強みは、本来スペインとは異なるところにある。

 前線にはスピードとフィジカル、突破力を備えた選手がそろっている。ボールを保持して相手を動かし続けるよりも、奪った瞬間に一気にゴールへ向かうカウンターアタックの方が、選手たちの特性を生かしやすい。

 だからこそ、フランスには明確な守備の設計が必要だった。

 『ESPN』は、試合後のエムバペのコメントを以下のように紹介している。

「ファビアン(・ルイス)とロドリには、余裕を持ってプレーする時間が十分にあった。プレスをかける際の意思疎通が不足していた。マンツーマンでプレスをかけ、相手にもこちらと同じように走ることを強いるべきだったと思う」

 このエムバペの発言からも、問題が個々の運動量ではなく、誰がどこへ出て、その背後を誰が埋めるのかという連動性にあったことがうかがえる。

 そうした共通認識がなければ、選手たちは個別にボールを追いかけることになる。

 前線の選手がプレスに出ても、中盤が連動しなければ、その背後を使われる。中盤が前に出れば、今度は最終ラインとの間が空く。最終ラインが押し上げられなければ、チーム全体が間延びしてしまう。

 スペイン戦のフランスは、「どこで、どのようにボールを奪うのか」という共通した守備基準を、ピッチ上で示し続けることができなかった。

 そのため、前から奪いに行くのか、いったん引いて構えるのかが曖昧になった。選手がそれぞれの判断で対応する時間が増え、スペインに簡単に守備の基準を外されてしまった。

 スペインのように、立ち位置によって数的優位を生み出すチームを相手に、守備の狙いが共有されていなければ、ただボールを支配されるだけになる。

フランスの「個」を消した育成年代からの蓄積

フランス代表に勝利して決勝進出を果たしたスペイン代表
スペイン代表【写真:Getty Images】


 これが、ふたつ目の要因である。

 スペインとフランスには、それぞれ異なるフットボールの文化が流れている。

 スペインは、立ち位置とパスによって優位性をつくることを得意とする。選手個々がボールを扱えるだけでなく、チーム全体が同じ原則に基づいて動くことができる。

 対するフランスは、突出した個人能力を最大限に生かすことで強さを発揮してきた。多少チームの形が崩れても、圧倒的なスピードやパワー、テクニックによって局面を解決できる。

 どちらが優れているという話ではない。

 フランスは、自分たちの特性を生かした守備とカウンターを徹底すれば、スペインにとって極めて危険な相手になれたはずだ。

 しかし、この試合ではスペインの土俵に立ちながら、スペインほど明確な原則を持つことができなかった。

 個の能力で上回っていたとしても、11人が同じ基準で動く相手に対し、個別の判断だけで戦えば後手に回る。

 もちろん、スペインにも局面を単独で変えられる選手はいる。違いは個人能力の有無ではなく、その能力をチームの原則にどう組み込んでいたかにある。
 スペインがフランスを圧倒した最大の理由は、選手個々の能力差ではない。

 育成年代から築き上げてきた、スペインのフットボールDNA。それは幼い年代から植え付けられた個人戦術やチーム戦術に対する理解力の高さだ。この積み重ねがフランスの圧倒的な「個」を試合から消したのかもしれない。

(文:高橋大地)

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