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コラム 6時間前

マンチェスター・ユナイテッドの補強は成功だったのか。中盤3人を獲得も、埋まらなかった“2つの穴”【プレミアリーグ識者が考える補強診断(1)】

マンチェスター・ユナイテッド
マンチェスター・ユナイテッド、補強診断【写真:Getty Images】



 昨季、マンチェスター・ユナイテッドはマイケル・キャリック暫定監督の下でシーズン終盤に巻き返し、 最終的に3位でシーズンを終えた。今夏にはキャリックが正式監督に就任。再浮上を目指す新体制は、中盤に3選手を加える一方、最終ラインの補強には動きが少なかった。果たして、今夏の補強はチームの課題を解決するものだったのか。「獲得」「放出」「計画性」「バランス」「コスパ」の5項目を各20点、計100点満点で採点する。(文:安洋一郎)[1/2ページ]

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最優先事項だった「中盤の補強」

カゼミーロ
昨季退団したカゼミーロ【写真:Getty Images】


 今夏のマンチェスター・ユナイテッドは、補強をしなかったのではない。補強したにもかかわらず、チームに必要なピースが揃っていないというのが現状だと考える。

 大きく動いたのが中盤だ。カゼミーロが退団したことに加えて、FIFAワールドカップ2026(北中米W杯)でマヌエル・ウガルテが負傷。レギュラー候補がコビー・メイヌーのみという状況で、アンドレイ・サントス、ユーリ・ティーレマンス、カルロス・バレバの3人を獲得した。

 メイヌーを軸に戦うことが予想されている中で、3選手を獲得したこと自体はポジティブだ。しかし、この補強戦略には疑問符がつく。昨季後半戦の躍進を支えたカゼミーロのように、中盤の底でバランスを保ちながらボール奪取にも強みを持つ選手を獲得しなかったのだ。

 最初に獲得を発表したサントスは、筆者の見解では、そもそもプレミアリーグとの相性が良いとは思えない。スピードが足りない上に切り替えも遅く、オープンな展開になればなるほど弱点が出やすい。

 チェルシー時代もモイセス・カイセドのような広い守備範囲を誇るバランサーがいることが前提だった。どちらかと言えばメイヌーに近い動きが得意な選手であり、両者ともにネガティブトランジションでの課題があることを踏まえると、併用は難しいだろう。

 サントス、バレバ、ティーレマンスの3人はいずれも優れた能力を持つ一方、「メイヌーの隣で中盤のバランスを取る」という役割には適任者がいない。

 現状ではローテーション要員という位置づけになりそうで、その役割の選手に5630万ユーロ(約104.1億円)を支払うのは高すぎる。

バレバとティーレマンスはメイヌーを支えられるか

カルロス・バレバ&ユーリ・ティーレマンス
今季新加入のカルロス・バレバ&ユーリ・ティーレマンス【写真:Getty Images】



 今夏の移籍市場で、チーム最高額となる7590万ユーロ(約140億円)で加入したバレバ。一昨季は大きく飛躍したが、昨季は別人のように不調に陥った。シーズンを通して集中力を欠き、前半22分で交代を命じられた試合もあった。

 スタミナにも大きな課題を残し、昨季のプレミアリーグでは先発した23試合のうち20試合で途中交代。これはファビアン・ヒュルツェラー監督からも指摘されていた課題だ。ユナイテッドで活躍するためには、まず一昨季のコンディションを取り戻す必要がある。

 その上でメイヌーとの相性を考えると、決して良いとは言えない。バレバはボール奪取に強みを持つ選手だが、彼の場合は縦にも横にも広範囲に動いてこそ真価を発揮できるタイプ。中盤でバランスを取る役割を与えると、現状のプレースタイルでは持ち味が半減する。

 恐らくメイヌーとバレバが同時にピッチに立つと、昨季までのブライトンにおけるヤシン・アヤリとバレバのコンビに似た状況が生まれると予想する。両者ともに動きすぎるため、最終ラインと中盤の間 が空きやすくなる。

 開幕時点ではバレバがけがを負っている関係もあり、現状のファーストチョイスは、第2節でコンビを組んだメイヌーとティーレマンスになりそうだ。

 しかし、ティーレマンスもスピードに優れた選手ではなく、アストン・ヴィラではブバカル・カマラやアマドゥ・オナナが中盤の底でバランスを取っていた。

 今夏に獲得した3人とも長所は異なる。しかし、3人の中にメイヌーを自由にするための選手はいない。

 今のユナイテッドには中盤のバランサーが不在だ。必要だったのは、派手なボール奪取能力よりも、CBの前に立ってポジションを崩さず、味方の攻撃参加を許容できるタイプだったのではないだろうか。

進まなかった最終ラインの補強

リサンドロ・マルティネス&ルーク・ショ
リサンドロ・マルティネス&ルーク・ショ【写真:Getty Images】



 今季のユナイテッドは、昨季と異なりUEFAチャンピオンズリーグ(CL)を戦う。週2試合の過密日程を乗り切るためには、十分な選手層を揃える必要があった。

 しかし、現時点では選手が足りないと言わざるを得ない。欧州カップ戦での指揮が初となるマイケル・キャリック監督を助けるような編成はできていない。

 最も後手に回ったのが、最終ラインの補強だ。3人の中盤を補強した一方で、DFの補強はゼロ。特に稼働率に不安を残す左SBルーク・ショーのサブに本職の選手を獲得できなかったのは、致命的になるかもしれない。

 CB陣もけがに悩まされるリサンドロ・マルティネスが負傷すると、一気に質と厚みが厳しくなる。レニー・ヨロやエイデン・ヘブンも、現時点では先発として計算するには不安が残り、一人でも負傷するとドミノ倒しのように負担が連鎖する可能性がある 。

 もちろん、すべてをフロントの判断だけで片付けることもできない。グレイザー家時代からの巨額債務など、さまざまな要因が重なり、今夏の移籍市場における予算が限られていたことも考慮する必要がある。

 ユナイテッドを擁護できるポイントがあるとすれば、今夏に中盤の補強を徹底したことが、明確な計画であったということだ。イギリス『The Telegraph』によると、ユナイテッドの新体制のフロントは、2028年までのプレミアリーグ優勝を目指して3段階の補強プランを立てていたという。

 昨季はマテウス・クーニャやブライアン・エンベウモ、ベンヤミン・シェシュコら前線、今夏は中盤、来夏は守備陣という計画だそうだ。

 以前までフロントの計画性を感じられなかったことを踏まえると、プランがあること自体は大きな成長だと言える。

 しかし、この計画にどこまで縛られたのかは検証の余地があるだろう。プランを優先するあまり、今季を戦うために必要な戦力が後回しになったのであれば元も子もない。

 長期的な視点では理解できるポイントがある一方で、今季の戦力編成としては疑問が残る。

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