
決勝点をあげたンワディケ・ウチェブライアン世雄【写真:Getty Images】
北朝鮮代表との準々決勝で決勝点を挙げ、U-21日本代表をベスト4へ導いたンワディケ・ウチェブライアン世雄。今大会初先発の大型FWが示したのは、得点力だけではなかった。前線で身体を張り、中盤へ下りて攻撃をつなぐ。その姿はまるで、A代表の上田綺世やスペイン代表FWミケル・オヤルサバルに通ずるものがあった。
決勝点だけではない、前線での貢献
先発を9人入れ替えた一戦で、191cmの大型ストライカーが結果を出した。
9月26日に行われたアジア競技大会準々決勝で、大岩剛監督率いるU-21日本代表はU-23北朝鮮代表を1-0で下し、ベスト4進出を決めた。決勝点を挙げたのは、この日先発に名を連ねたンワディケ・ウチェブライアン世雄だ。
39分、後方からのロングボールに反応すると、北朝鮮DFとの競り合いを制し、相手GKとの1対1を右足で決めた。今年5月に桐蔭横浜大学からデンマーク2部のオールボーBKへの加入と4年契約が発表されたFWが、巡ってきたチャンスに一発回答を出した。
もっとも、この日のンワディケで注目したいのは、ゴール以外の場面だ。
43分、中島洋太朗のロングフィードをセンターサークル付近で受け、嶋本悠大に預ける。嶋本は左サイドを駆け上がる横山夢樹へスルーパスを送った。相手のカバーに阻まれて通らなかったものの、ンワディケのポストプレーが前進のきっかけをつくった。
54分には中島の左コーナーキックにニアサイドで合わせ、ボールの軌道に変化をつけた。フィニッシャーの役割を担いながら、味方の攻撃も助ける。こうした働きには、A代表の上田綺世と重なるものがある。
白眉は74分だった。日本がボールを持たず、【4-4-2】のブロックを組む局面でも、ンワディケは献身的に動く。相手のボランチにボールが入ると、自陣のペナルティエリア手前まで戻ってプレスをかけた。
味方のクリアから攻撃に切り替わると、今度は半身の姿勢でボールを受ける。このとき最前線にはインサイドハーフの嶋本が位置していた。ンワディケは左サイドを上がってくる石橋瀬凪へボールをつなぎ、自身は相手のファウルを受けた。
最前線で身体を張るだけでなく、中盤へ下りて攻撃をつなぐ。嶋本と縦の位置関係を入れ替えながらボールを引き出したこの場面には、スペイン代表FWミケル・オヤルサバルを思わせるものもあった。
組み立て位置は上田とオヤルサバルの中間地点
スタッツとして、大部分は上田に近い。データサイト『Sofascore』をもとに、ンワディケの今季リーグ戦(8試合・593分)と、上田(フェイエノールト所属時)、オヤルサバル(レアル・ソシエダ)の昨季リーグ戦を90分あたりの数値で並べる。
デュエル数はンワディケの13.7回に対して上田が11.9回。勝率は52.2%と52.1%でほぼ変わらない。空中戦の勝利数も3.79回と3.55回で、前線で背負って潰れる“型”は上田と重なる。
地上戦の勝率も55.0%と上田(50.0%)を上回り、被ファウル数は1.97回と上田の2.13回に迫る。北朝鮮戦でもンワディケは2回ファウルを受けており、データに限りなく近い実態がある。
一方で、全パスのうち自陣で出した割合は上田の26.4%に対し、ンワディケは29.6%。オヤルサバルの34.5%との中間に位置しており、上田よりも一歩低い位置で組み立てに関わっていることがうかがえる。74分に披露したシーンは、そうした意識が具体化した例かもしれない。
もちろん、デンマーク2部と欧州主要リーグでは舞台が違う。90分あたりのキーパスは0.30回と、上田(0.75回)やオヤルサバル(1.39回)には及ばず、崩しの局面ではまだ差がある。ンワディケのヨーロッパ挑戦もまだ始まったばかりで、あくまで現時点の指標だ。
それでも、上田のような身体の強さを土台に、オヤルサバルのように中盤へ下りて攻撃をつなぐ。そんな未来像を描かせるだけの材料が、北朝鮮戦のピッチには詰まっていた。
2028年のロサンゼルス五輪を目指す世代において、前線のポジションをめぐる競争は続く。ゴールと、それ以外の働きの両面で存在感を示したこの一戦は、ンワディケにとって大きなアピールになった。9月30日のウズベキスタン代表との準決勝でも、得点と攻撃をつなぐ働きに期待がかかる。
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