
湘南ベルマーレ戦のFC今治【写真:Getty Images】
久保山由清監督の就任後、初のリーグ戦となった湘南ベルマーレ戦で、FC今治は1-2で敗れた。それでも、相手ペナルティエリア内でのタッチは今季最多の28回を記録し、ゴール前へ迫る機会は大きく増えた。ロングボールとセットプレーの活用で何が変わり、何が課題として残ったのか。
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ボックス内タッチ数は前体制平均の約2倍
明治安田J2リーグ第8節。1-1で迎えた後半アディショナルタイム、ファビアン・ゴンザレスのPKをGK伊藤元太が一度は止めたものの、こぼれ球を押し込まれた。土壇場の失点により、ホームチームのFC今治は1-2で湘南ベルマーレに黒星を喫している。
9月20日付でアベル・モウレロ監督を解任し、久保山由清ヘッドコーチが指揮を引き継いでから最初のリーグ戦は、勝ち点を得られないまま終わった。今治は勝ち点「4」で最下位にとどまっている。
それでも、攻撃の数字には明確な変化があった。データサイト『Sofascore』によると、今治の相手ペナルティエリア内でのタッチは28回。モウレロ監督が指揮したリーグ戦6試合の平均14.2回の約2倍に達し、それまでの最多19回も大きく上回る2026/27シーズン最多となった。
エリア内シュートも13本で、それまでの平均6.5本、最多9本を更新した。
モウレロ体制の今治は、ボール保持をゴール前でのプレーにつなげることに課題を抱えていた。支配率は6試合平均で51.2%。エリア内タッチ数は平均13.4回で第7節終了時点でリーグ20チーム中17位にとどまっていた。
2-3で敗れた第2節のRB大宮アルディージャ戦では、今治は2得点を挙げたが、いずれもセットプレーから、しかもエリア外からのシュートである(1点目はクロスと思われるボールがそのままネットを揺らした形)。流れの中からゴール前を崩して奪った得点はなかった。第6節・サガン鳥栖戦のエリア内タッチは8回まで落ち込んでいる。
もっとも、久保山監督にとって、湘南戦は初めての指揮ではない。前節の横浜FC戦は、モウレロ監督が体調不良で不在となったため、ヘッドコーチとして代行で指揮を執った。このときは暫定指揮官として引き継ぐような戦い方を講じていたが、正式就任後は一転した。
久保山監督は就任時、Jリーグ公式サイトを通じて“ボールを奪い、スピーディにゴールへ向かっていく姿勢”を掲げた。湘南戦の数字からは、その志向がうかがえる。
ロングボールは59本で、モウレロ体制の平均39本の約1.5倍。空中戦は両チーム合計で55回と、前体制の試合における平均33回から増え、今治の勝率は55%だった。後方からパスをつなぐだけでなく、少ない手数で前線へ届ける攻撃の比重を高めたことが、ゴール前への進出を増やす一因になったと考えられる。
とにかく相手陣地へ。まずは降格圏脱出を目指す
もうひとつの変化がスローインだ。スローインから生まれたシュートは6本。xG(ゴール期待値)は0.83で、シュート数はモウレロ体制6試合の合計3本を1試合で上回った。
24分のシーンは決定機だった。ハーフウェーライン手前のスローインからエジガル・ジュニオにボールが渡り、ペナルティエリア内まで運ぶ。そこからゴール前に飛び込む駒井善成に供給したが、伸ばした足にミートしきれず、ボールは枠外へ。1-0でリードして迎えた局面、相手チームをさらに突き放すチャンスだった。
一方、ボール保持に関する数字は低下した。支配率はモウレロ体制の平均50.4%から45%に下がり、パス数は平均448本に対して395本、パス成功率は平均84%に対して77%だった。
湘南戦ではとにかく相手陣地にボールを入れて、まさしく“ゴールへ向かっていく”シンプルなサッカーを志向していた。
6月のモウレロ氏招聘時、太田康介GMは、攻撃の構築と攻守における主体的なサッカーをテーマに掲げ、土台から強いチームを積み上げる必要性を説明していた。クラブが掲げる岡田メソッドも、主体的にプレーできる選手の自立とチームの自律を重視している(出典:FC今治公式サイト)。
今回の解任に際してクラブが説明したのは、J1昇格を目指しながら最下位に沈む現状と、巻き返しの必要性だった。昇格の目標は維持しつつ、まずは降格圏を脱し、プレーオフ圏内を目指す方針を示している。湘南戦で見えた変化は、そのための見直しと捉えるのが妥当だろう。
“主体的”が表すものが必ずしもボール保持率とは限らないが、チームは明らかにモウレロ政権下から戦い方を変えた。まだ新体制発足からリーグ戦は湘南との1試合だけとはいえ、ボックス内タッチ数28回は前向きに捉えることもできるだろう。
開幕時からの課題である守備(第8節終了時点で北海道コンサドーレ札幌と並ぶJ2ワーストの失点数「17」)は依然として懸念材料だが、そこにどう向き合うかも引き続き注目ポイントである。
まずは降格圏からの脱出へ向けて、この攻撃の迫力を継続しながら、相手に許す決定機を減らせるか。久保山体制の真価は、次節以降に問われる。
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