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「これがマンUのやり方だ」。グリーンウッドに続く逸材が共演! スールシャール監督が若手を抜擢する理由とは?【EL分析コラム】

UEFAヨーロッパリーグ(EL)ラウンド32・2ndレグ、マンチェスター・ユナイテッド対レアル・ソシエダが現地時間25日に行われ、0-0の引き分けに終わった。1stレグを0-4で勝利していたユナイテッドはラウンド16へ進出。大勢が決まった試合終盤には、ユナイテッドの未来を担う2人がピッチに並んだ。(文:加藤健一)

text by 加藤健一 photo by Getty Images

ソシエダのPK失敗と幻の初ゴール

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【写真:Getty Images】

 2ndレグは1stレグの余韻を感じるような90分だった。どちらもチャンスはあったが、1対1の攻防ではマンチェスター・ユナイテッドが勝っていた。1stレグの点差を守り抜いたユナイテッドが順当に次のステージへと駒を進めている。

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 両チームともに次戦を見据えた選手起用となった。ソシエダはナチョ・モンレアルはベンチに置き、ダビド・シルバとイジャラメンディはベンチからも外した。ミケル・オヤルサバルとアレクサンデル・イサクはハーフタイムでベンチに退いている。

 前半をスコアレスで終えると、オーレ・グンナー・スールシャール監督も静かに試合をクローズさせていった。ブルーノ・フェルナンデスとマーカス・ラッシュフォードは45分ずつプレータイムをシェアし、フレッジとアーロン・ワン=ビサカも45分でお役御免。ハリー・マグワイアには実に4か月ぶりとなる休養が与えられた。

 ソシエダからしてみれば、前半のPKを決めていれば流れは変わっていたかもしれない。12分にアンドニ・ゴロサベルがペナルティエリア内で倒されてPKを獲得。しかし、オヤルサバルのキックは左にそれてしまった。

 ソシエダの生え抜きでキャプテンを務めるオヤルサバルは、これまで17本のPKを蹴ってすべて成功させている。18本目の失敗を責められる人はいなかった。意気消沈のソシエダは90分で枠内シュートが1本に留まった。

 ユナイテッドはCKからアクセル・トゥアンゼベが頭で合わせてゴールネットを揺らした。しかし、ニアでヴィクトル・リンデレフがファウルを犯していたためゴールは認められず。トゥアンゼベのキャリア初ゴールは幻に終わった。

マンUが誇る2人の若き才能

 時間が進むにつれて、興味は試合全体から選手個人へと移った。負傷したダニエル・ジェームズに代えてアマド・ディアロを59分に入れる。さらに76分にはメイソン・グリーンウッドを下げてショラ・ショレティレを送り込んだ。

 2002年生まれのディアロは冬にアタランタから加入した。アタランタでは17歳108日で迎えたセリエAデビュー戦でいきなりゴールを決め、昨年12月にはUEFAチャンピオンズリーグでもプレーした。プレミアリーグでの出場はまだないが、ソシエダとの1stレグで移籍後初出場。セカンドチームでは格の違いを見せている。

 173cmと上背はないが、細かいボールタッチや推進力のあるドリブルが魅力だ。ボールを奪われることも何度かあったが、するすると抜いていくドリブルは可能性を感じさせる。左利きの右ウインガーというのもチームにとっては貴重な存在だ。

 ショレティレはディアロよりもさらに2歳も若い。今月2日に17歳になり、8日にプロ契約を結んだばかり。21日のニューカッスル戦でトップチーム初出場を果たし、この試合ではクラブ史上最年少記録で欧州デビューを飾った。

 ニューカッスルのアカデミーでプレーしていたが、10歳のときにマンチェスターに移住してユナイテッドのアカデミーに加わった。14歳でUEFAユースリーグ(U-19)に出場し、16歳でU-23(セカンドチーム)に活躍の場を移している。

 ニューカッスルのアカデミー時代のコーチは、ショレティレの速さと強さが若き日のマイカ・リチャーズを彷彿とさせるという。常に上の年代でプレーしてきたショレティレは、体格で優る相手に対応するテクニックやポジショニングを磨いた。攻撃的なポジションをすべてカバーできるユーティリティ性は、その副産物なのかもしれない。

若手を起用するマンUの流儀

「若者たちは時間を必要としていた」とスールシャール監督が言うように、公式戦のピッチに立つことに大きな意味があった。実際に彼らはピッチで何かを成し遂げたわけではないが、この経験はユナイテッドの未来に向けた投資である。

 ユナイテッドが強いときは、若い選手が活躍していた。ライアン・ギグスやデイビッド・ベッカムといったアカデミー出身だけでなく、ウェイン・ルーニーのような選手も当てはまる。クリスティアーノ・ロナウドのようにメガクラブに行く選手もいるが、キャリアのピークをユナイテッドで過ごした選手は多い。

 現役選手でロールモデルになるのはラッシュフォードだろう。スコット・マクトミネイがそれに続き、今季は壁にぶつかっているグリーンウッドもそうなるはずだ。ショレティレは「アカデミーのみんなにとって、マーカス(ラッシュフォード)とメイソン(グリーンウッド)は憧れの存在」と語っている。

 ショレティレのプレミアリーグデビューを受けて、スールシャール監督は「これは我々のDNAに刻まれているもので、マンチェスター・ユナイテッド流のやり方だ」と述べた。選手として過去の栄光を経験したスールシャール監督は、若手の重要性を強く感じており、彼らの起用法に長けている。

 もちろん、彼らの成功が保証されているわけではなく、デビューが早くても伸び悩む選手はこれまでも数多くいた。それでも、結果を残して実力を示せば、年齢に関係なく出場機会は訪れる。選手と監督の共通認識が、若手が次々と活躍する土壌になっている。

(文:加藤健一)

【了】

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