フットサル日本代表は、17日と19日に国際親善試合でブラジル代表と対戦し、0-4、2-3というスコアで連敗を喫した。14日にサッカー日本代表がブラジル代表に初勝利を挙げた快挙に続くことはできず。元サッカー日本代表で、現在はフットサルのFリーグ理事長を務める松井大輔氏に両競技に通じる両国の差と、それが生まれる背景を語ってもらった。(取材・文:川原宏樹)
「昔でいうとジダンのような…」日本代表がワールドカップ優勝を狙うために
――現代のサッカーでいうと、縦パスの技術を求められるのはもはやボランチだけには限らないですよね。
「そうですね。ボランチだけでなく、センターバックやサイドバックなど後方の選手に求められる能力で必須になります。幼少期にフットサルをやっていれば身につけられやすいですし、もっともっとそういう選手が増えてほしいですね。
特にフットサルにいえることですが、位置的優位な選手を探し出して、そこへパスを出していかなければゴールには近づけません。だから縦パスを出す技術だけでなく、優位になる位置取りやそれを見つけ出す戦術的な能力も養えます」
――それは日本人選手がさらに成長する余地といえますね。
「サッカーもフットサルも年々プレッシングが激しくて厳しくなっています。そのような状況下でも前を向いた姿勢でボールをキープし、縦パスを出せる選手は貴重です。すぐに複数人で囲み込んでくる守備網のなかでも、ドリブルで相手をはがしたり、ワンツーなどで抜け出したりしながら時間をつくり出せる選手は確実に重宝されます。
昔でいうとジダンのような選手ですね。そういった選手がもっと増えると、日本代表はもっと強くなると思いますし、ワールドカップ優勝を狙ううえではそのような選手がいないと厳しくなるときが必ず出てくるでしょう」
サッカーに必要な能力をフットサルで養うことができる
――サッカーのブラジル戦後には、3人目が絡むグループでの崩し方、その共通理解という点を今後の日本が成長するために必要になるポイントとして挙げていました。
「そのためには今話したような前を向いて時間をつくれる選手が、まず必要になりますよね。そういった選手の育成も、グループでの崩し方の共通理解も、僕はフットサルで養えると思っています。
やはり、多くの機会を体験することが近道で、フットサルはサッカーよりもその機会が多く訪れます。ボールを扱う技術もそうですが、オフ・ザ・ボールの動き方、それらが重なって生み出されるコンビネーションでもフットサルのほうが多くの機会を得られます。特に、コンビネーションはそういった経験から培われるもので、いきなり合わせられるものではありません。
ただ、そういった原理・原則を理解している選手とは、即興的にコンビネーションをつくり出すことができます。ですから、幼少期から原理・原則や共通理解を養っておけば、練習する時間が短い代表チームでもブラジル代表のように無意識に生み出せるようになるだと考えています」
――コンビネーションを即興的につくり出せたという話でしたが、その選手は誰ですか?
「やっぱりシュンさん(中村俊輔)ですかね。それにヤットさん(遠藤保仁)、ヒデさんもそうでしたし、(小野)伸二くんも合わせてくれました。自分はいい動きをすれば、必ずといっていいほどパスが届いた印象があります。自分がパスを出すほうの立場でいうと、山瀬(功治)や森崎和(幸)、田中達也とかは3人目の動きがうまく、やりやすいなあと感じていました」
――今挙がってきた名前は、すべて日本代表クラスでした。やはり、そのレベルの選手は合わせやすいということでしょうか?
「もちろん、そういう共通理解を持ち合わせているから代表に招集されるというのは、ひとつの理由だと思います。ですが、決して代表クラスの選手ではなくても、合う人はいます。フットサルのなかでも合う選手はいました。技術的に上手、下手というのはあまり関係なく、動き方やタイミングを瞬間的に複数人で合わせられるかになり、理解し合えて意思疎通できるかポイントになります」
「発展途上の日本が取り組まないっていう選択肢はない」
――その近道が幼少期のフットサル経験ということですね。
「そうですね。ブラジルの育成年代では週2回くらいフットサルもやっているらしいんですよ。それが今回サッカーの代表でも、フットサルの代表でも見せたようなプレーにつながっています。ワールドカップ最多優勝の国がそうやって取り組んでいるのですから、ベスト16だ8だといっている発展途上の日本が取り組まないっていう選択肢はないですよね」
――やはり、もっとフットサルを普及していかなければいけないですね。
「そうですね。来年1月にコリンチャンスのフットサルチームが来日して、名古屋金城ふ頭アリーナで10日に名古屋オーシャンズと、12日にFリーグ選抜と対戦することになっています。その機会にサッカーとフットサルの関係性など詳しく聞いて、取り入れられるところは積極的に取り入れていきたいと思っています」
――サッカーは来年のワールドカップイヤーを前にブラジル代表に勝利し、応援する機運も高まってきました。
「今回はサッカーもフットサルもブラジル代表が来日するということで、その共通項をきっかけにフットサルにも興味を持ってもらえるように話しました。どちらがいいというわけではなく、本当にどちらもいいんですよ。サッカーがブラジル戦の勝利をきっかけに盛り上がってきたように感じますし、フットサルも一緒になって盛り上がってほしいと思っています。
それでいうと、11月21日からフットサル女子のワールドカップが初めて開催されることになりました。女子Fリーグに所属する選手らが日本代表として戦うので、男子のサッカーだけでなくこちらも応援してほしいですね」
(取材・文:川原宏樹)
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